森永製菓の中計から読み解く「ROIC分析」
以下では、具体的に森永製菓がどのようにROICを経営で活用しているのかを見ていきましょう。
まずは森永製菓のROICについてです。ROEとは異なり、ROICは有価証券報告書に直接は記載されていません。そのため、ROICを把握するためには、ROICを目標数値にしている企業の中期経営計画や決算説明資料などを確認する必要があります。そうでない場合は、自らROICを計算する必要があります。そうすることで、ROICを他社比較することができるようになるのです。
森永製菓の場合は、冒頭にも見たように中期経営計画における目標とする財務数値になっていることもあり、開示されています。具体的には、2024年3月期(FY2023)のROICは9.6%となっています。
以下では、この値を有価証券報告書から再現してみます。先ほど見たように、ROICの計算式は以下で表現されます。
- ROIC=税引後営業利益÷投下資本
2024年3月期の営業利益は202.7億円、有価証券報告書によれば実効税率は30.6%ですので、税引後営業利益は約140.7億円になります。投下資本は「有利子負債+株主資本」の期首・期末平均です。これらを用いると、ROICは9.6%となり、中期経営計画で開示されているROICの数値と一致します。
重要なのは、ROICが開示されていない場合でも、有価証券報告書から再現できるという点です。
ROEの場合、分母は自己資本ですが、ROICは投下資本となっています。そのため、企業が投下した資本全体からどれだけの営業利益を生み出すかを見ることになります。先ほど図表9でROICツリーを示しましたが、森永製菓の場合、逆ROICツリーといった形で、どのような戦略や施策の視点からROICを改善するかも示されています。
このように営業利益ベースで、投下資本を基軸とした財務分析ができることで、施策にも落とし込みやすいのがROICの強みであり、特徴なのです。
ROIC分析の優れた点は事業別の計算が可能なこと
これまで見たのは森永製菓全体でのROICでした。ROICの強みは、企業全体だけでなく、個別の事業別にもROICを計算できる点にあります。森永製菓における食料品製造におけるセグメントは以下のようになっています。
森永製菓はこれらのセグメント別の事業においてROICを開示しています。事業別のROICを可視化することで、限られた経営資源をどこに重点的に投資するかを検討することができるようになります。具体的には、森永製菓は中期経営計画において、FY2026(2027年3月期)のROICは10%以上を目指しています。この10%以上のROICを目指すために、それぞれの事業においてROICをどのようにコントロールするかが示されています。
多くの場合、この中期経営計画で示された事業別のROICに基づいて現場でのマネジメントと実務が実行されていくことになるのです。
このようにROICは企業全体に加えて、個別セグメント毎にも計算することができます。そして、ROICを中期経営計画に使っている会社の多くは森永製菓のようにROICマネジメントを実践するようになってきています。
