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鳥貴族のDXは「売上の1%投資で売上10%UP」を目指す。中林CDIOが目指すおもてなしの再定義とは

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店舗現場のDXで「2,000時間」を創出

 中林氏の戦略は、理想論に留まらない。着任後わずか3ヵ月で導入した「経費精算の仕組み」は、現場の負担を劇的に軽減する実利をもたらした。

 従来、店舗での急な買い出しの領収書は、店長が手書きで記入し、エリアマネージャーがチェック。その後、本部の経理が膨大な紙の束から手入力で転記するという、極めてアナログな工程を辿っていた。中林氏はこの情報の「大元」に着目し、マネーフォワードを用いたデジタル化を断行。スマホでレシートを撮影するだけで、AIとOCRによって仕分けが自動化・リアルタイム化される仕組みを構築した。

「現場にデジタルを投入し、その場でデータ化する。これにより、年間2,000時間の工数削減を実現しました。単純作業から解放されることで、店長はお客様に向き合う時間を創出できるのです」(中林氏)

 さらに、店舗でのインシデント(トラブルや苦情)対応にもServiceNowを導入。メールベースの報告を廃止し、進捗管理や根本解決のプロセスを可視化した。この仕組みもわずか3ヵ月で稼働させ、次期には海外拠点への展開も予定している。現場の「負」をデジタルで解消し、そのリソースをホスピタリティへ転換する。これが中林流DXの鉄則である。

セキュリティは「利便性を損なうコスト」から「安心して働ける基盤」へ

 守りの要であるサイバーセキュリティについても、中林氏は攻めの姿勢を崩さない。従来のVPN(仮想専用線)を廃止し、最新の「ゼロトラストネットワーク」へと移行する方針を打ち出した。

 セキュリティ対策は往々にして「利便性を損なうコスト」と捉えられがちだが、中林氏はこれを「安心して働ける基盤」と再定義する。入口で攻撃を防ぐだけでなく、万が一マルウェアに感染しても他への影響を遮断(拡散防止)する仕組みを導入。同時に、シングルサインオン(SSO)などの認証制御を強化することで、社員が必要なシステムにストレスなくアクセスできる環境を整える。

「セキュリティはお客様や企業を守るだけでなく、利便性を高めるものでなければならない」(中林氏)

 この言葉は、守りのITを「価値創造の武器」へと転換させる経営視点そのものである。

読者への示唆:AI経営の成否は「現場のプロセス設計」に宿る

 「鳥貴族」などを運営するエターナルホスピタリティグループの事例は、DXを推進する経営企画や事業開発部門に重要な示唆を与える。

  1. 「目的」の再定義:DXは単なる効率化ではなく、自社の存在価値(同社であれば「日常の居場所」としてのホスピタリティ)を最大化するための手段であること。
  2. 現場からのデジタル化:現場で発生するアナログ情報をいかに早くデータ化し、全業務を「リアルタイム連携」させるか。
  3. スピードと成功体験:3ヵ月という短期間で成果を出し、組織に「変われる」という実感を持たせること。

 中林氏は、2025年7月期のDX投資額を「年間売上の1%」と定め、2028年7月期までに「売上10%アップ(約40億円相当)」を達成するという明確な投資対効果(ROI)を掲げている。

「売上1%の投資で、売上10%UPを目指す。人とデジタルで外食を変革し、グローバル市場へ挑戦します」(中林氏)

 「日常の居場所」をデジタルの力でさらに輝かせる同社の挑戦は、アナログの象徴であった外食産業が、データとAIを駆使した「高付加価値産業」へと脱皮する試金石となるだろう。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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