オープンか、クローズドか──noteと弁護士ドットコムの分岐点
良質なデータを持つ者がAI時代を制する。では、そのデータは開くべきか、閉じるべきか。キーノートには、note 代表取締役CEOの加藤貞顕氏と元榮氏が登壇。両社でCXO/CSOを務める深津貴之氏の進行で、戦略の分岐点を探った。
弁護士ドットコムがデータを閉じる理由は2つある。1つは権利者への配慮だ。書籍は出版社を通じて著者からライセンスを受けており、無償で開放すれば出版のエコシステムを棄損する。もう1つは正確性である。「汎用AIに学習させるより、データベース化して、そこに依拠する形で制御する方が正確なアウトプットが生まれる」と元榮氏は語る。
対してnoteは「ほぼオープン」だ。「サービスの本質は流通」と加藤氏は語る。人とコンテンツが出会う量を最大化するには、開いておくのが一番という考え方だ。
その結果、noteは生成AIが回答の参照元として挙げるサイトで日本2位(1位はYouTube、3位はWikipedia)になった。AIに不足しがちな「実際に体験した人の生の声」が集まっていることが強みだという。結論はAIの要約で済んでも、そこに至る過程に価値があれば読者はクリックする。これが、いわゆるゼロクリック問題に対する同社の答えだ。
共通点は「AIに選ばれ、つながる」こと
データのオープン・クローズド戦略の方向は逆だが、両社は「AIに選ばれ続ける」ことを前提にしている点で一致する。弁護士ドットコムはデータを守りつつ、2026年9月にLegalBrain エージェントのClaude向けMCPコネクタを提供開始した。汎用AIの裏方として組み込まれる道と、直接使ってもらう道の「両面作戦」をとる。
深津氏は「ビッグテックのAIは、各領域の深い正確性を単独では担保しにくい。専門データを持つ企業は、基盤モデルの部品になり得る」と指摘した。GEO(生成AI検索最適化)も、記事の量産ではなく、自社の得意分野や実績を誠実かつ透明に示すことが重要だという。
データを貯めるだけでは足りない。価値あるデータがそこにあると知られ、アクセスできる経路を設計することが要だ。
汎用AIが普及するほど、他社が持たない一次データと、最終責任を担う専門家の価値が増す。そのデータを開くか閉じるかではなく、AIや他のシステムとどうつなぐか。法務に限らず、AI時代の競争優位を考える経営者にとって示唆に富むカンファレンスだった。



