ミクロ影響要因の5フォースの相互作用
次に、5フォース間の内部の相互作用について見ていきましょう。
買い手と売り手
買い手の交渉力に作用する要因のダイナミクスについて考えてみましょう(図10左)。買い手にとって、重要性や緊急性が高く、裁量の余地が少なく、感情的なものほど買い手の交渉力は弱まり、その逆であれば交渉力は高まります。たとえば、皆さんが急に歯痛に襲われた場合を考えてみましょう。歯医者さんに対する皆さんの交渉力はいかがでしょうか?
同様に売り手の交渉力においては、その固有の知識、サイズと数、リソースの希少性、前方統合(原材料メーカーが完成品メーカー、流通業が小売業に進出など)に対する力が相互に作用することがあります(図10右)。
新規参入者と代替オファー
新規参入者について見ていきましょう。新規参入するためには、物理的なリソース、知識やノウハウといった情報、参入のための経済的コストが絡み合ってきます。さらに、その業界の居心地も大きな影響を与えます。たとえば、お葬式屋さんはポーター教授の理論によれば魅力的なビジネスですが、新規参入には心理的な抵抗があるかもしれません(図11左)。
代替オファーについても見ていきましょう。DIY(Do it yourself)とは、買い手が自分でニーズを満たしてしまうことです。たとえば、私たち全てが食事を自宅でつくろうとしたら、外食産業は大変なことになってしまいます。また、技術進化は代替オファーを可能にすると同時に、オファーのバンドリングとアンバンドリングを促進します。スマートフォンやキンドル端末はその典型的な例です。「所有するから借りる」といった社会的な心理的変化も代替オファーを促進することがあります(図11右)。
競合企業と補完事業者
特定の業界における競争の激しさは、プレイヤーのサイズと数、市場に対するコミットメント度合い、戦略と気質、類似性と相違性が相互に作用しています。たとえば、プレイヤーの数が多く、各々が市場に対して強いコミットメントをしているほど競争は激しくなります。さらに、多くのプレイヤーのビジネスモデルや戦略が類似していれば、真向う対決となる傾向にあります(図12左)。
ウィンテル(マイクロソフトとインテル)、ゲーム機本体のメーカーとゲームソフト開発業者、アップルのiPodと音楽業界のような関係は、相互に重要な補完関係にあります。補完事業者によるオファーとのシナジー効果や互換性が高まり、顧客ニーズに応じた多様な組合せが存在するようになれば、その力は高まるでしょう。顧客が双方に接することができる同一のプラットフォームがあれば、さらに魅力が増すようになります(図12右)。