日本企業の採用活動に問題提起、著書『採用学』のインパクト
——服部先生の著書「採用学」が、各方面から注目されています。どんなところが、どんなふうに注目・評価されているのだと思われますか。
著書では、採用という活動を「募集・出会い」「選考・評価」「入社・定着」の時系列で分けて、そこに紐づく欧米や日本の研究・調査結果を紹介しています。まずそこで見えてくるのが、日本企業の場合、「募集・出会い」のフェーズにおいてイメージやフィーリングなど曖昧な感覚で成り立っているという事実です。それは「選考・評価」でも同様で、主観による弊害とともに、客観性を強めたテストの有用性などに触れています。いずれもかつての採用活動に疑問を呈するものばかり。そこに共感される方、反発を感じる方の両者がいて、話題になっているのだと思います。
そして、実際に従来の採用の在り方に疑問を持った企業が、それぞれ採用の在り方を考え、模索している様子を紹介したのですが、中には奇抜なものも少なくありません。また、本当に効果があるのか、将来大企業になった時にどうするのか、長期的な成果はまだ誰にもわかりません。あくまで問題提起型で、将来に向けて考えるヒントとして提供していることも、議論の起点となる所以なのでしょう。
ただ、私自身は一見奇抜に見える取り組みも、無策でいるよりは断然良いと思っています。黙っていても人が集まる有名企業でもなく、戦略的な採用には興味のない企業でもなく、その間の「このままではいけない」と漠然と思いながらも拠り所なく漠然と前年通り採用活動を行っている、そんな企業の方に「気づき」を与えられたら本望です。もちろん戦略的な採用に興味がない企業も喚起したいところですが、まずは課題感をもっている企業の方になんらかのヒントを与えられたらと思いますね。中で触れているように、人も予算もなく採用が難しい企業こそ、自ら独自の採用方針を導き出すことで大企業では採用できないような強みをもつ人材の採用が可能になり、チャンスがあるわけですから。