ビジネスモデルを戦略的にする―価値基準モデルの活用

第25回

[公開日]

[著] 白井 和康

[タグ] ビジネスモデル 競争戦略

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プロダクトリーダーシップは、スピードと創造性

 ビジネスアーキテクチャーそのものは、ビジネスの論理的な構造を可視化するものです。したがって、特定の戦略論に依存するわけではありません。こう言ってしまうと話がそこで終わってしまいますので、比較的相性の良い戦略論をサンプルとして取り上げながら続きを進めていきましょう。

 ご紹介するのは、『ナンバーワン企業の法則』(注)という書籍で紹介されている「価値基準モデル(Value-Discipline Model)」というものです。価値基準では、「プロダクトリーダーシップ」、「顧客との親密性」、「卓越したオペレーション」という3つの大きな基本戦略から構成されています。これをビジネスモデルに当てはめて考えると、「プロダクト革新」、「顧客インターフェース」、「オペレーション基盤」という3つの柱に各々焦点を当てる戦略であると考えることができます。

プロダクトリーダーシップ

 プロダクトリーダーシップを追求する企業は、「未知の製品、試したことのない革新的なプロダクトやサービスを提供し続けることによって、ライバル企業が真似しにくい、あるいは真似されるころにはさらに新しいプロダクトやサービスを商品化している企業である。最先端の技術、斬新なデザインや機能を好む顧客が主要なターゲットとなる。」ということになります。代表的な企業に、3M、ソニー、インテル、ナイキ、スウォッチなどを挙げています。

 この戦略を追求する企業は、ビジネスモデルのプロダクト革新にまず焦点を当て、残りの3つの柱をそれにフィットさせるようにビジネスモデルを設計していきます(図8)。

プロダクトリーダーシップ図8:プロダクトリーダーシップ

 顧客インターフェースから順を追って見ていきましょう。チャネルに関しては、アップルやサントリーのように、販売目的だけでなく市場トレンドを把握したり、新しいプロダクトやサービスに対するアイディアや機会を発見したりする目的で直営ショップを運営することがあります。顧客リレーションシップに関しては、ナイキのように顧客を自社のプロダクト創造活動に参加させるようなコクリエーション(共創)を展開するような企業も多くなってきました。

 オペレーション基盤に関していえば、何よりも官僚主義を回避し、起業家精神を維持することが重要のようです。また、創造性と革新性をもち、小さな失敗を恐れないことです。たとえば、3Mのポストイットは粘着性の弱いノリという失敗作からひらめいたアイディアです。また、協働ネットワークの活用では、新しいアイディアを世界中の企業や個人から集めるP&Gのコネクト&デベロップ(オープンイノベーション)は有名です。

 収益モデルに関していえば、差別化されたオファーに対するプレミアム価格をいかに上手に設定するかが重要となります。コスト構造においては、カニバリゼーション(新しいオファーの市場投入によって古いオファーの収益が喰われてしまうこと)をコスト構造の中で考慮する必要があります(図9)。

プロダクトリーダーシップの典型的なビジネスモデル図9:プロダクトリーダーシップの典型的なビジネスモデル

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