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虫の目で「顧客が成し遂げようとしているジョブ」を観察する方法とは?

番外編:ビジネスモデルデザイン講座とは(後編)

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 9月より、Biz/Zine主催のワークショップ「ビジネスモデルデザイン講座」を担当させていただくビジネスイノベーションハブの白井です。前回は、ワークショップ前半(午前)の内容についてお話しさせていただきましたが、今回はワークショップ後半(午後)の内容を少しご紹介させていただきます。ここでは、虫の目でビジネスモデルをのぞき込むために有効な2つのツールを活用していきます。

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もし近未来のキッチンのプロデュースを頼まれたら…

課題解決に1時間もらえるとしたら、私なら課題について考えることに55分費やし、解決策を考えることに5分費やすだろうね。(アルバート・アインシュタイン)

 ワークショップ後半(午後)は、ビジネスモデルキャンバスの右端にある顧客セグメントにズームインしていきます。参加者は、ランチタイムの後に鳥の目(遠くから鳥瞰する目)から虫の目(近くから観察する目)に切り替えます。アインシュタインの言葉通り、ターゲットとする顧客セグメントが抱えている課題に対して、午後の多くの時間を費やします。

 ワークショップでは、「もし近未来のキッチンのプロデュースを頼まれたら…」という2つの目のテーマをベースに、新しいソリューションのアイディアをグループでディスカッションしていきます。ターゲットとする顧客セグメントは、家庭をもつ若い主婦です。顧客セグメントの課題に焦点を当てるために、私たちは顧客ジョブマップというツールを活用します(図1)。

 ジョブとは、「私たちが生きていく上で、したいこと/しなければならないこと」の全てを包含する概念です。ジョブには、特定のプロダクトやサービスとは関係なく、顧客がしたいこと/しなければならないことを表す普遍的なジョブ、特定のプロダクトやサービスからの価値を最大限に引き出すためにしたいこと/しなければならないことを表す消費チェーン上のジョブがあります。どちらも、実際にしていること(行動)というよりは、本当にしたいと望んでいることを意味します。一方、カスタマージャーニーマップは、特定のチャネルやタッチポイントを通じて、特定のサービス交流を通じた顧客の行動と経験を表すものです。どのツールが優れているかどうかではなく、そのツールを使う目的を前もって理解しておくことが重要です。

 家族サービスをすることは、特定のプロダクトやサービスとは関係がないマイホームパパの普遍的なジョブであり、家族と一緒にシアターで映画を観ていることは実際にしている行動です(状況によっては、ディズニーランドという選択肢もあったでしょう)。一方、特定のプロダクトやサービスの使い方を学習することは、消費チェーン上のジョブであり、マニュアルやガイドを読んでいることは実際にしている行動です(iPodを買った時に、マニュアルがなかったことを覚えていますか?)。

 顧客ジョブマップは、顧客の普遍的なジョブと課題に対する仮説を幅広く洗い出すためのツールであり、市場機会の発見と顧客の定義(または再定義)を目的とするものです。

顧客ジョブマップ(図1)顧客ジョブマップ

 ワークショップにおける顧客のジョブは、「夕食の支度をすること」です。もし、皆さんが新しいタイプの美容院や理髪店を経営されようとしているのであれば、「髪の毛を整えること」または「身なりを整えること」が顧客のジョブでしょう。

 次に、このジョブを「ジョブステップ」と呼ばれる一連のタスクに分解していきます。例えば、「髪の毛を整えること」というジョブをもつ顧客は、どのようなヘアスタイルにするのか計画し、雑誌で流行のヘアスタイルに関する情報を収集するでしょう。また、自分でカットするにせよ、美容院でカットしてもらうにせよ、思った通りのヘアスタイルかどうかを監視し、そうでなければ修正する(してもらう)でしょう。

 最後に、「ヘアスタイルを決めるまでの時間を最小化する」、「思ってもみないヘアスタイルになってしまう可能性を最小化する」というように、各々のタスクにおいて顧客が望んでいる成果に関する仮説をグループでたくさん出していきます。

ジョブと成果のステートメント(図2)ジョブと成果のステートメント

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この記事の著者

白井 和康(シライ カズヤス)

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