IoTの構成要素とIoTプロジェクト成功のポイント
IDC Japanによると、2014年の国内IoT支出額は5402億円で、インターネットに接続するモノの数は197億個だった。それが2020年には支出額は13.8兆円、接続するモノの数は530億個になるという。
その一方、現時点で実際にIoTに取り組んでいる国内企業は、ごく一部だ。ECサイト構築パッケージ市場でシェアトップの実績を持ち、IoT事業にも積極的に取り組んでいるエスキュービズム・テクノロジーの代表取締役社長、武下真典氏は、IoTについて企業側から以下のような言葉をよく聞くという。
・何かやらないといけないのはわかるけど、どう始めればいいか分からない。
・I(Internet)とT(Things)をどうやってつなぐのかが分からない。
・アナログ企業なのでIoTとは関係ないのでは。
・そもそもIoTの定義が分からない。
たとえば製造業であればモノはある。小売業も同様だ。ただ、それがネットにつながって、どのようなビジネスの付加価値を生み出していくのかが分からない。「アナログ企業なので」という考え方について武下氏は「今までのITの文脈とIoTの文脈を同じように捉えており、それではIoTプロジェクトを成功させるのは難しい」と見ている。そして多くの人がポイントと考えるのが、最後の「IoTの定義」だろう。
IoTとはInternet of Things:モノのインターネット化だが、武下氏が見てきたところでは、きちんとした定義はない。実際、色々な捉え方をされている。
・ クローズドなネットワークではなく、インターネットにつながることで、接続先が大幅に増えたもの。
・ 「人」のアクションに対して複数の機器が対応するというメカニズム。
・ 人を排除して効率化を求めるのがM2M。人のサポートを主軸においているのがIoT。
この中で最大のポイントはやはり「インターネットにつながる」ということだろう。たとえばエスキュービズム・テクノロジーでは現在、数百を超える拠点があるコインパーキングのビジネスをしている。それをインターネットにつなげることにより、遠隔での操作やシステム更新が可能になっている。IoT以前であれば、人が各拠点に出向く必要があった。
ただ実際、ネットワークを使えるビジネスをしていても、インターネットには出ていないケースが多い。武下氏がその理由を尋ねると「ハッキングなどによる個人情報流出といったリスクが怖い」ということで、閉ざされたネットワークの中でビジネスをした方が良いという話になったという。ただ最近では技術が進歩していて、それほどコストをかけなくてもインターネット上に閉域的でセキュアなネットワークを実現できるようになっている。
IoTの定義について武下氏自身は「今までスタンドアローンだったモノが、ネットワークにつながることで、今までとは異なる価値を創造できるようになるコト・モノ」といったざっくりとした認識でOKと考えている。
以上のような認識をふまえた上で、IoTプロジェクトを成功させるためには、IoTのメカニズムがわかっていなければならない。
エスキュービズム・テクノロジーでは、IoTを構成する要素として、以下の8レイヤーに分けることが出来ると考えている。
アプリケーション、クラウド、通信規格、コアモジュール、ソフトウェア、認識、検知、ハード・物理だ。
この中でアプリケーションとクラウドはイメージしやすい。通信規格になると、たとえばWi-Fi、Bluetoothは分かるが、モノにつなげるときには、それぞれの特性や設備コストを比較して、どれを使えばいいかの判断が難しくなる。
最も難しいのがコアモジュールのレイヤーで、中心はモノがネットに出て行くゲートウェイの部分になる。Raspberrry PiとかArmadilloなどに、どういう風に振る舞わせるのかが難しい。
解析や認識、演算のソフトウェアはイメージできるし、顔、声、指紋、QRコードの認識も普通の生活の経験で理解しやすい。検知やハード・物理も同様だ。
武下氏は「やはりコアモジュールを中心とした中央部が難しい、というのが我々の見解です。この辺をきちんと分けて考えるようになると、IoTがもう少し身近になると思っています」と語る。
構成要素が分かったら、次に考えなければならないのは「どうしたらIoTプロジェクトが成功するのか」になる。
IoTというと、「まずはモノをネットにつなごう」(モノ型)や「ビッグデータを活用しよう」(データ型)という話になりがちだ。武下氏は「それはそれでまったく問題無い」と語る。
ただし今後、「IoTを使い、どのような社会課題、企業課題の解決を成し遂げるか」という視点に立つならば、「ITでは対応できなかった課題解決に価値がある」という考え方が重要になってくる。