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Biz/Zineインタビュー (AD)

あなたの会社が5年後に倒産、どんな理由で?――なぜビジネスモデルをイノベーションする必要があるのか

新刊インタビュー:『ビジネスモデル・ナビゲーター』

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 業界に、ある日突然新しいビジネスモデルの企業が参入してきたら、旧態依然とした企業は淘汰されてしまいます。そんな危機感を抱きながらイノベーションに取り組めていない企業のために、最も必要とされているビジネスモデルのイノベーションをもたらす手法を紹介したのが『ビジネスモデル・ナビゲーター』です。今回、本書の訳者である渡邊哲さん(マキシマイズ)と森田寿さん(トランスコスモス)にお話をうかがいました。

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なぜ日本に『ビジネスモデル・ナビゲーター』が必要なのか

――翔泳社が10月3日(月)に刊行した『ビジネスモデル・ナビゲーター』では、ベンチャーではなく既存企業がイノベーションを起こすための手法を紹介し、55個のビジネスモデルを解説しています。本書に注目し翻訳を手がけられたのにはどういった理由があったのでしょうか。

渡邊:私は以前翔泳社から刊行された『アントレプレナーの教科書』(2009年刊行、2016年1月に新装版)を翻訳したのですが、そこで紹介されている手法はベンチャーには有用でも、既存企業では使いづらいのではと感じていました。既存企業では現場が面白いアイデアを出しても、上司や経営層に却下されてしまうことが多いでしょう。また、新しいアイデアを出すことができなかったり、そもそも提案できる雰囲気の会社ではなかったりもします。ですから、既存企業がイノベーションを起こすための手法が必要だと考えていたんです。

 そんな折、IoTやインダストリー4.0が脚光を浴び始めたので、アメリカのGEやドイツのボッシュなど欧米の先進企業がどんなことをしているのか調べてみました。すると、ボッシュでは自社が持つIoTの技術だけでなく、ビジネスモデルを作り出すための手法もセットにして売り込んでいることが分かりました。

 私が本書の原書に出会ったのは、ボッシュのサイトでした。そこにはIoTのホワイトペーパーと一緒にビジネスモデルのホワイトペーパーもあり、その中で紹介されていたんですよ。ボッシュがイノベーションのために用いた手法は『ビジネスモデル・ナビゲーター』だけではありませんが、企業風土の似ているドイツで使えるなら日本でも使えるかもしれないと思ったんです。それで原書を読んでみたらたいへん面白く、ぜひ日本にもさせてほしいと原著者であるスイス・ザンクトガレン大学のオリヴァー・ガスマン教授にコンタクトし、今回の邦訳に至りました。

 アメリカのイノベーションはベンチャー企業が中心ですが、ヨーロッパでは従来型の企業が手法を開発してイノベーションを起こし、ビジネスモデルを組み替えようとしています。そこで日本だけ取り残されたらたいへんなことになりますからね。

 それともう一つ、個人的な理由もあります。私は40歳から60歳は将来の日本に対して責任を持つべき世代だと考えています。私自身は45歳なので、15年後の日本をよくしないといけないんです。今の子供たちが大人になったとき、日本の産業が衰退していては申し訳ないですから、日頃から「日本をよくする」ことをミッションとして仕事をしています。本書に関する活動はその一つなんです。

渡邊哲さん渡邊哲さん:株式会社マキシマイズ 代表取締役

森田:実は、私は渡邊さんに本書を紹介された一人です。現在トランスコスモスに在籍していますが、以前はミスミグループ本社に勤めていて、会社にイノベーションをもたらすための次世代プラットフォーム開発室で仕事をしていました。そのときたまたま渡邊さんと仕事をすることがあり、原書を紹介していただいたんです。すでに活用していて、実際に役立つことをお伝えできればと思います。

イノベーションしたい経営層だけでなくコンサルタントにも役立つ

――森田さんに原書を紹介されたとのことですが、邦訳を考えられたとき、どういう読者を想定していましたか?

渡邊:大きく言えば、昔からビジネスをやっていてそろそろビジネスモデルを変えないとまずいのではないかと考えている企業、中小企業ならオーナーやその跡継ぎと幹部、大企業なら経営陣や経営企画部の方ですね。

 実際に本書を使ってアイデアを出すのは現場のマネージャーだと思いますが、新しいことをやるにはリスクがあり、予算も必要なので経営陣からのバックアップが不可欠です。ですから、新しいビジネスモデルに取り組むと決めた経営陣に対し、実際に考えて企画して実行する現場の方にも読んでいただければと思っています。

 あと、自社でイノベーションを起こしたい方だけでなく、顧客にイノベーションをもたらす仕事をしている方も対象です。以前スイスでビジネスモデル・ナビゲーターを学ぶワークショップを受けたのですが、半分がBotCで製品やサービスを提供している企業の方で、もう半分はBtoBの企業の方や大学教授などでした。

 本書は前者のように自分の会社をよくしたいと考えている方にはもちろん有用です。それと同時に、クライアントからビジネスモデルの提案を求められている企業の方。また、顧客企業のイノベーションに自社の技術が役立つと分かっているけれど、顧客側のビジネスモデルを変える必要があると考えている企業の方も読んでいただけるといいと思います。ボッシュのように、製品やサービスと合わせてビジネスモデルも一緒に提案できればより競争力がつきます。システムインテグレータやコンサルティング、ソフトベンダーといった企業が当てはまると思います。

 ヨーロッパでも自社のためだけでなく、顧客のために『ビジネスモデル・ナビゲーター』が使われていますし、私への問い合わせもこの頃はコンサルティング系の企業からのものが増えてきています。

森田:また、本書で紹介されているマジック・トライアングルという手法は普段の業務でも役立つので、イノベーションに関わる仕事をしていない方でも読んでほしいですね。むしろイノベーションだけに使うのはもったいないとも思います。

 私は今、社内・社外へコンサルティングを行う仕事をしています。そのため、日々いろいろな人が相談に来るんですが、マジック・トライアングルで考えると非常にアドバイスをしやすいんです。

 マジック・トライアングルは、ビジネスモデルが「誰に対して」「どういう価値を」「どういう方法で提供し」「どうやって利益を生み出すのか」という四つの軸でできていると捉え、ビジネスモデルがどのような形をしているのか明らかにするためのツールです。

 相談事をこれに当てはめてみると、すぐに現状が整理でき、問題となっている部分を炙り出せます。皆さんも経験があると思いますが、相談事というのは基本的には整理することでどこが問題か分かり、解決に向かいますよね。普段の業務や課題をビジネスモデルとして捉え、マジック・トライアングルで整理することで生産性が高まります。

 また、日本企業ではイノベーションに携わるのが事業企画や経営企画、あるいは経営層が中心ですが、企業には何百人何千人、あるいは何万人と社員がいますので、そのリソースを使わないのはもったいないですよね。全員がイノベーションできる企業が強いのは明白です。自分にはイノベーションは関係ないと思っている方にも本書が広まることが日本の企業を強くすることに繋がるのではないでしょうか。

森田寿さん森田寿さん:株式会社トランスコスモス 副理事
デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括
コンサルティング本部 副本部長

日本企業はビジネスモデルを新しく作る力が弱い

――そもそもの話になりますが、お二人は日本の既存企業のどこに問題があるとお考えですか?

渡邊:まずイノベーションについて整理する必要があります。日本ではイノベーションが語られるとき、技術・製品、プロセス、ビジネスモデルそれぞれのイノベーションが一緒にされることが多いんです。ある人はビジネスモデルの話をしているのに、別の人は技術の話をしていることは往々にしてあり、話が噛み合いません。そのような場合にはたいてい、目に見えて分かりやすい技術や製品の話になり、産学連携してIoTやAIに取り組まなくてはいけない、といった結論になってしまいます。

 ですが、それではいけません。イノベーションには三種類あり、この十数年はビジネスモデルで勝つ企業が伸びている。このことを理解していただくだけで、ビジネスモデルのイノベーションをしなくてはいけない、そのためにどうすればいいのか、と考えられるようになると思います。

 例えばドイツの企業は研究開発が得意で製造工程などのプロセスも洗練されていますが、ビジネスモデルを構築することが苦手です。そのため、このところビジネスモデルで勝負するアメリカのベンチャーにしてやられています。

 この状況をなんとかしないといけないということになり、ヨーロッパでは既存企業がビジネスモデルのイノベーションに取り組むための手法として『ビジネスモデル・ナビゲーター』などが登場しました。

 日本企業はドイツ企業と同じで、技術とプロセスは非常に優れていても、ビジネスモデルがうまく作れず市場で負けてしまっています。にもかかわらずどんなイノベーションが必要なのか曖昧なまま議論しても、よい成果を出すことはできないでしょう。

森田:日本でも、今はある程度の企業規模になると、たいていイノベーションを担当する部署を置いています。できるかどうかは別として、置いておかないと不安なんですね。ただ、ほとんど成果が出ていないのが実情です。

 私はミスミの前は16年間ソニーに勤務していました。転職したのはITバブルで絶好調の頃でしたが、その後にソニーなど日本の家電メーカーはどんどん業績を悪化させていきました。それは結局、面白い商品やサービスを作るだけでは競争に勝てなくなったからです。

 デジタル化がここまで進むと、何十億円何百億円とかけて開発した商品もあっという間に真似されてしまいます。部品さえ買えば誰でも同じことができるわけですから。ですので、商品単体で勝負しようとすると、もっと早く安く作れるところに太刀打ちできません。この構図によって、一流と呼ばれた日本のメーカーがどんどん落ちぶれていきました。つまり、もはや商品イノベーションだけで競争力を保つのは難しく、ビジネスモデルの変革が不可欠なんです。

10回中9回は失敗、それでもイノベーションへの取り組みを認める

――日本企業がそんなにもビジネスモデルに弱いのはなぜですか?

渡邊:日本企業全体というより、昔からある企業が特にビジネスモデルを作ることを苦手にしていると私は考えています。日本の社会では老舗や歴史のある既存の大企業がもてはやされます。そして社内では出る杭が打たれます。さらにそういう企業には過去に成功したモデルがあるので、それに引っ張られ、新しいことをする動きが遅くなります。

 新しいアイデアを提案しても、経営層が「顧客が望まない」と一蹴すればそれで終わりです。あるいは、過去の成功モデルは洗練されているので、新しいアイデアは効率が悪くリスクも大きくなりがちで敬遠されてしまいます。こうした現状が新しいビジネスモデルを立ち上げにくい理由でしょう。これは日本に限らず、欧米でも伝統ある企業には共通していることです。

森田:やはりいまだに社内常識や業界常識の影響力が強く、さらに人事制度にも問題があります。なにせ一度失敗するとどこかに飛ばされたり、クビになったりしますから、敗者復活ができません。

 大学で一生懸命勉強して処世術を身につけた人が、大企業に入社してわざわざ仕事を失うようなリスクの高いことはやりませんよね。周りを見ながら、そこそこうまくやっていこうというのが大半だと思います。イノベーションを起こしたくても10回のうち9回は失敗するものですので、取り組む人が出てこないのは当然でしょう。

 しかし、そうしてイノベーションできずに放置していると、どこかの企業が一度ブレイクスルーした途端、一気にやられてしまいます。AppleがiTunesとiPodを生み出したら、ソニーのウォークマンがまったく売れなくなったようにです。

 実は、ソニーではAppleが発表する何年も前に、ほとんど同じものを作っていたんですよ。ですが、グループ会社内でCDが売れなくなる、版権管理ができなくなるといった意見が相次いで世には出せませんでした。そうしたらiPodが出てきてやられてしまったわけです。

危機感を抱いていない企業はほとんどない

――そもそも危機感を抱いていない企業、または危機感があっても踏み出せない企業もあると思います。そういう企業にこそ本書が必要だと思いますが、どうすれば本気で取り組まなければならないと気づけるのでしょうか。

渡邊:そこが一番の難関ですね。11月にワークショップを予定していますが、その中ではそこで気づきを得るためのロールプレイを実施します。「イノベーションに取り組まず現状のまま会社を経営したため、5年後に倒産しました。その記者会見を開いてください」という課題です。

 その5年間で世の中がどう変わったのか、どんな競合が出てきたのか、どのように既存の商品やサービスが売れなくなって倒産に至ったのかを参加者に説明してもらいます。それが現実になるかもしれない、と気づいてもらうのが主眼です。私もいろいろと啓蒙をしていますが、特に経営層は日常的に意識する必要があると思います。

森田:もちろん、水を飲みたくない馬を水飲み場に連れていっても無駄ですから、興味のない人にまで本書を広める必要はないと思っています。ただ、そういう人は少数派だと思います。このご時世、不安を持っていない人はいないでしょう。不安に思っているのになぜイノベーションに取り組まないのかというと、リスクを取りたくない、面倒、やり方が分からないという理由が大きいのだと思います。

渡邊:なんとかしなければならないとうすうす感じている経営者や経営企画部、ないし現場の人も、実際に取り組むのは無理だと思っているかもしれません。だから本気になれない。ですが、それゆえに本書によって心理的なハードルを下げたいと考えています。

 やろうと思えばできるんです。それに気づければやってみようという流れになるでしょう。初めから諦める必要はありません。ですから、『ビジネスモデル・ナビゲーター』の手法が日本で普及して、イノベーションはやればできると思われるようになることも重要ですね。

森田:本書を読めば誰でも簡単にイノベーションを起こせるわけではありませんが、読むことで少なくとも手順が分かりますし、スタートからゴールまでのイメージができるようになります。渡邊さんがおっしゃったように、「5年後、あなたの会社が倒産しました。さあ記者会見を開いてください」と言われると、自分の会社がイノベーションに取り組んでいないこと、そしてイノベーションの重要性に気づけていないかが分かるでしょう。私もハッとしましたね。

 その意味では、ミスミは平時から危機感を持ってイノベーションに取り組んでいました。主に機械部品を売っている商社だったので、巨大な潜在競合としてグローバル大手ECサイトを想定しました。もし企業規模や取扱高のはるかに大きなグローバル大手ECサイトがうちと同じものを扱ったらどうなるか、そのときどうすればいいのか、ということをあらかじめ想定して対策を練るのです。

 グローバル大手企業と同じことしかできなければ確実に負けてしまいます。ですから、私は負けない仕組みを創れと言われ、顧客にヒアリングしたり業界を調べたりして、巨大企業が真似できないことを懸命に考えました。

 その当時やっていたことは、『ビジネスモデル・ナビゲーター』の55パターンでいうと「合気道モデル」です。競合相手と正反対のポジショニングを取ることで、競合の強みを弱みに変えるビジネスモデルですね。ミスミは十数年の間に社員400名にも満たない企業が1万人のグローバル企業に成長したすばらしい会社ですが、このように平時から危機感を持って事業に取り組んでいたことが成長の原動力になっていたと思います。

合気道カード55パターンの一つ「合気道」

他業界にこそ学ぶべきビジネスモデルがある

渡邊:本書でガスマン教授が指摘しているように、ある業界において画期的なビジネスモデルは、どこか別の業界では当たり前の手法だということがほとんどなんです。金融業界に新しいビジネスモデルが登場したと思っても、実は小売業界のスーパーマーケットが昔からやっている方法だった、といったこともよくあります。ガスマン教授らは300の成功事例を分析して、「ビジネスモデルイノベーションの90%以上は、単に他業界における既存のアイデアや概念の組み合わせに過ぎない」ことを見出したんです。

 それだったら、成功しているビジネスモデルを他業界に持ち込みやすくしたほうがいいですよね。そこで『ビジネスモデル・ナビゲーター』が生み出されたわけです。55個のパターンがあらかじめ用意されているので、ゼロから考える必要がなく自社に適したアイデアが生まれやすいでしょう。やはり、画期的なことをやるなら他業界を見ないといけません

森田:レコードやCDを過去のものにしたのは音楽業界ではなく電機メーカーのAppleですからね。保守的でイノベーションのない業界はどんどんよその業界の企業に潰されています。なので、そうならないために、先に他業界に学ばないといけないわけです。

渡邊:Uberは自動車を保有していないのに、ビジネスモデルだけでタクシー業界を破壊し始めています。アメリカではYouTubeやNetflixがブロックバスターという巨大なビデオレンタル企業を完全に潰してしまいました。Airbnbも、ホテルの物件を持っていないにもかかわらずホテル業界の脅威になっています。

 どんな業界であっても、他業界の企業が突然参入してきて市場を席巻する可能性があります。その危機感があれば、ビジネスモデルのイノベーションに取り組まない理由はないと気づいていただけるのではないでしょうか。

『ビジネスモデル・ナビゲーター 55パターンカード』も同時発売

 本書の刊行と同時に、『ビジネスモデル・ナビゲーター 55パターンカード』も発売しています。55枚のこのカードには、本書で紹介されるビジネスモデルがコンパクトにまとめられ、そのビジネスモデルで成功している日本企業が事例として掲載されています。

 複数人で集まってブレインストーミングを行うとき、より効率的に多くアイデアを生み出し、ブラッシュアップするために活用してみてください。本書とのセットも販売しています。

カードを購入 セットで購入

※『55パターンカード』と『書籍&カードセット』は、年内に限りSEshopで割引販売中です。
 また、本カードをSEshopでご購入いただいた方にはダウンロード提供している「イノベーション路線図」(p44参照)の実物大マップ(840mm×440mm)をプレゼントいたします。

ビジネスモデル・ナビゲーター

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ビジネスモデル・ナビゲーター

著者:オリヴァー・ガスマン、カロリン・フランケンバーガー、ミハエラ・チック
訳者:渡邊哲、森田寿
発売日:2016年10月3日(月)
価格:2,376円(税込)

本書では55パターンの組み合わせや創造的な模倣によって、新しいビジネスモデルを創出するツールを紹介。ビジネスモデルをシステマチックに構築するノウハウは、企業文化で日本と共通点の多いドイツでも多くの実績をあげています。


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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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