濱口秀司が語る「バイアス壊しが重要な理由」

濱口 秀司/「HPSWorld 2013」 基調講演レポート・前編

[公開日]

[講演者] 濱口 秀司 [取材・構成] 有須 晶子 [編] BizZine編集部

[タグ] デザイン思考 競争戦略

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専門家ほどバイアスの罠にはまりやすい

 濱口氏は、「効率的に頭を使おうとするなら、バイアスは非常に有効だ」とも指摘した。名付けやタギング、先入観といったバイアスがあるからこそ、素早くものごとを考えられるわけだが、そこに罠があるとして、ある実験結果を紹介した。

図表2 バイアスの利点と欠点

専門家には見えないゴリラの話

 ハーバードメディカルスクールは、ボストンの病院でCTスキャンやMRIの専門家である放射線科医24人を対象に、被験者1人につき、結節がぷつぷつと10箇所つけてあるフェイクのCTスキャンを5枚見せ、それらを探させるという実験をした。5枚目には、10個の結節以外の異常の要素としてダンスをするゴリラが加えられている。

 ゴリラのサイズは通常の結節の大きさの45~48倍である。24人中20人が、このゴリラを見落とした。

 この実験では、専門医たちがどのように目を動かしているかを調べ、ゴリラを見ていることを確認した。実験後にスライドを見せ、ゴリラがいると伝えても、まだ「見えない」という被験者もいた(参考:http://www.theinvisiblegorilla.com/[英文])。

図表3 実験に使われた肺のCTスキャン(右上方にゴリラが埋め込まれている)
(Image: Psychological Science)

 濱口氏は、この実験について次のように解説した。

 図表3のように、一般人にもこのゴリラはかなりはっきり見える。にもかかわらず、83%の専門家が見落とした。毎日、大量の情報を受け取る専門家は、専門家だからこそ、効率的にものを見ようとして、このゴリラでさえ見落としてしまう。

 この教訓をビジネスに当てはめてみよう。事業を効率的に進めたければ、バイアスを使ってもよい。しかし、変革を起こそうと思ったら、このゴリラが見えなければならない。つまり、それほど難しい。ゴリラが見えていない状態から何か新しいことをしようとするなら、まず、このゴリラを見つけなければならない。

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