「所有」から「共有」へ。このキーワードは昨今の経済分野においてもっとも注目されているもののひとつだ。「共有」つまり「シェア」することは、市場のなかでごく当たり前に行われるようになってきた。シェア経済の可能性は今後、より大きな広がりを見せていくだろう。シェアリングエコノミー協会が主催した「シェア経済サミット」では、国内外から有識者を集め、パネルディスカッションやトークセッション、ワークショップなどが行われた。
そのなかで、アムステルダムとソウルの事例をもとに、今後の日本におけるシェアリングシティの可能性について「世界のシェアリングシティ」の様子をレポートする。
先行するシェアリングシティ、オランダ・アムステルダムでは何が起きているのか?
オランダのアムステルダムは、2009年からシェアリングシティを目指す取り組みを行ってきた。登壇したハーマン・ファン・スプラン氏は、シェアリングエコノミーの発展を目指し、世界中の自治体や民間企業などに協力している団体shereNLの創設者だ。
シェアリングエコノミーが発展していくことで、人々は必要な時すぐにさまざまな商品やサービスにアクセスできるようになるはずです。2030年までに、世界の多くの都市でB to Cビジネスを主軸とした伝統的な経済モデルではなく、共有することを原理としたシェアリングエコノミーが主流となっていくのではないかと考えています。
スプラン氏は、現在アムステルダムで行われているシェアリング事業の実例として下記のようなものを挙げた。
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Peerby
工具やはしごといった普段頻繁に使うものではなく、かつ保管に場所をとるさまざまなものを貸し借りし合うためのプラットフォーム -
Thuisafgehaald
近くに住んでいる人同士で作った食事をシェアできるサービス -
Barqo
アムステルダム川に停泊しているボートを貸し出すためのプラットフォーム。アムステルダムにはボートを所有している人が多数いるが使用頻度は低い。 -
wehelpen
空になっている車のトランクを、宅配ボックス代わりにシェアできるサービス。 -
Konnektid
介護や家事、ペットの世話などを手伝い合うためのプラットフォーム。 -
powerpeers
風車のオーナーから直接エネルギーを買うことができるサービス。
アムステルダムでは、AirbnbやUBERといったグローバル規模で展開しているサービスはもちろん、地域のコミュニティに根ざしたシェアリングサービスが多数展開されている。スプラン氏によると、アムステルダムの市民のうち約84%がシェアリングエコノミーに肯定的だという。
シェアリングエコノミーが発展していくことで、人々は必要な時すぐにさまざまな商品やサービスにアクセスできるようになるはずです。2030年までに、世界の多くの都市でB to Cビジネスを主軸とした伝統的な経済モデルではなく、共有することを原理としたシェアリングエコノミーが主流となっていくのではないかと考えています。
スプラン氏は「シェアリングシティを実現するためには、政府や自治体、民間企業など、さまざまな立場の人たちが協力し合うことが必要不可欠です。さらに、国の垣根を超えて、世界規模の情報共有や協力体制を構築することが重要となってくるでしょう」と語った。