個人や組織を“イノベーション体質”に変える、「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」
――こうした考え方を、実際に日本企業が取り入れるとどうなるのでしょう。こうした「クリエイティブ・リレーションシップ」づくりによって、どのような変化が期待できますか。
山田:
博報堂ブランドデザインと株式会社レアは、この考え方を「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」として展開しています。例えば、せっかく「企業ビジョン」をつくってもその社内浸透がなかなか進まない、という課題を持つ企業も多いと思うのですが、こうした課題に対して、これまでに述べてきたような「デンマーク的」な思考を活かすためのプログラムです。自分自身が大切にすること、そして、チームとして大切にすることから発想するビジョンであれば、それはまさに生きたビジョンとなり、一人一人の主体的な行動を生みだす源泉になる。そうしたことをサポートできればと思います。
大本:
この際に気をつけたいのは、日本人同士、まして、同じ業界や企業にいる人同士だと、自分たちのことを同質的と感じやすいと思うのですが、本当は多様な人々の集まりだと理解することです。そのため、自己の掘り下げと他者への共有を通じて、その人ならではの個性をより導き出すことに注力します。「チームには多様性がある」と知ることで、このチームならば大きなチャレンジができるのではないか、と思えるようになるんです。
山田:
たとえば、カオスパイロットで実際に行われているワークを参考にしてつくられた、「ディープ・デモクラシー」というセッションがあります。企業のビジョンを語るステートメントを作成するプロセスなどに活用されるものです。それまでの議論を踏まえてコピーライターがステートメントの下書きを作成し、それを大きなスクリーンに投影して、参加メンバーはそのスクリーンの周りに輪になって座ります。ステートメントを一行一行みていく過程で、共感している人は輪の内側に寄って座り、その逆の人は外側に座ります。外側に座った人は改善点やアイデアを全体に共有し、みなでその場で文章を修正していきます。意見の多様性を可視化しながら、それをひとつに統合していく。そんなふうにしてメンバー全員が納得・共感できるステートメントを創り上げていきます。
このように、プロセスに参加し、自身の意見が反映される経験を通じて、そのビジョンは自分が創ったものだと社員に思っていただけるようになります。プロセスに参加した社員は、オーナーシップを持って、ビジョンを社内で実践するリーダーとなっていく。「客観的」「第三者視点」に企業のことを語っていたメンバーが、最終的に、その企業のビジョンを「自分を主語に」、「自分ごと化」して語るようになっていくんです。
大本:
「自分ごと化する」のは、これからの時代、とても重要になると思っています。強いリーダーがビッグピクチャーを描いてメンバーがそれに従うという組織ではなく、一人ひとりがリーダーシップを発揮しながら動いていくことが求められる時代だからです。
原:
社員一人ひとりがオーナーシップを持てるようになれば、その会社の中で新しいコトを起こす風土も生まれるはず。イノベーションは一人ひとりがオーナーシップを持つことから始まるんです。個人の可能性を信じて、強いリーダーがいなくても自走する組織文化をつくることで、個人や組織は“イノベーション体質”に変容していくと信じています。
【編集部より】
今回の取材で語られたデンマーク/カオスパイロットの哲学をもとに、「博報堂ブランドデザイン」と「株式会社レア」は共同で、ブランディングやイノベーションをサポートする「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」の提供を開始した。
デンマークのカオスパイロット本校から招いた講師による「クリエイティブ・リーダーシップ」の集中講義後、博報堂ブランドデザインによるブランドやイノベーションの「価値づくり」と、レアがカオスパイロットで学んだ創造的な人材・チーム作りに関する知見を用いて、チームの「関係性づくり」を行うプログラムだ。
■博報堂ブランドデザイン、デンマークのクリエイティブ人材育成専門機関 「カオスパイロット」と協働しブランディング/イノベーションをサポート 「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」を提供開始
・詳細はこちらから「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」
■7月11日には、デンマークの創造性に学ぶ「クリエイティブ・リレーションシップ・セミナー」と題するセミナーも予定されている
・詳細はこちらから「クリエイティブ・リレーションシップ・セミナー」