「理論と実践」、「デザインと技術」を自ら行き来する、i.lab横田さんが辿り着いた「人間中心イノベーション」
イノベーションの価値とは、果たして実践なのか、理論なのか、もしくは掛け合わせが大切なのか。セッションの冒頭、会場にそう問いかけた横田氏は、「イノベーションコンサル」を標榜するi.labで企業の新規事業開発に取り組み、その母体となった東大のi.schoolにてディレクターとして携わり、教育系のNPOを経営するという、3つの顔を持つ。そんな経験から、あえて実践を通じて理論化し、理論を実践に活かすことをライフワークにしているという。
横田氏のベースとなるのは、大学および修士課程で専攻した物理学。さらに20歳の時にグラフィックTシャツの作成・販売で初めて起業したことから、事業に興味がわいて野村総研へと就職し、技術の大切さを実感して光触媒の研究で工学部の博士課程へと進んだという異色の経歴を持つ。まさに、理論と実践、デザインと技術といった一見相反するものを行き来してきた。
その経験が体現するように、イノベーションは広く様々な領域にまたがり、連携し合っている。あえて分割するなら、多彩な情報からアイディアを見出す「0→1」の創出フェーズ、アイディアをかたちにする「1→10」事業化、そして世界に拡大していく「10→100」というプロセスに分けられるだろう。横田氏が得意とするのは「0→1」の部分、それが「1→10」「10→100」の部分にも広がりつつあるという。
そうした中で、i.labが最も重視する方法論が「人間中心イノベーション」だ。これまでイノベーションは「技術革新」と翻訳されてきた。しかし、近年では技術だけでなく、社会や組織なども含めた広義での「革新」と位置づけられている。i.labもまた、人や社会に対する理解・洞察に思考の軸足をおいた方法で、アイディアで社会をよりよく改革することを意識している。