“技術起点”だった製造業の事業開発が、「人間中心設計」や「デザイン思考」と交差する新たなスタイルとは?

Biz/Zine Day 2017 Summer 「IoTによるものづくり企業の生存戦略」 レポートvol.7

 イノベーションの創出手法として注目される「人間中心設計」や「デザイン思考」によるアプローチ。一方、これまでの製造業では、新たな技術開発による新商品・事業開発が行われてきた。近年、イノベーションをコンサルティングのテーマとするi.labでは、その2つの手法が交わる「交差点」に挑む機会が徐々に増えているという。今後、各手法はどのように発展し、統合するのか。Biz/Zine Day 2017の最後のセッションでは、企業で実際にイノベーティブな事業開発に取り組むRENAULT-NISSAN ALLIANCEの三好健宏氏、ポーラ化成工業の本川智紀氏を迎え、i.labの横田幸信氏、寺田知彦氏と議論を深めた。その模様を紹介する。

[公開日]

[講演者] 横田 幸信 寺田 知彦 三好 健宏 本川 智紀 [取材・構成] 伊藤 真美 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 オープンイノベーション

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「理論と実践」、「デザインと技術」を自ら行き来する、i.lab横田さんが辿り着いた「人間中心イノベーション」

 イノベーションの価値とは、果たして実践なのか、理論なのか、もしくは掛け合わせが大切なのか。セッションの冒頭、会場にそう問いかけた横田氏は、「イノベーションコンサル」を標榜するi.labで企業の新規事業開発に取り組み、その母体となった東大のi.schoolにてディレクターとして携わり、教育系のNPOを経営するという、3つの顔を持つ。そんな経験から、あえて実践を通じて理論化し、理論を実践に活かすことをライフワークにしているという。

 横田氏のベースとなるのは、大学および修士課程で専攻した物理学。さらに20歳の時にグラフィックTシャツの作成・販売で初めて起業したことから、事業に興味がわいて野村総研へと就職し、技術の大切さを実感して光触媒の研究で工学部の博士課程へと進んだという異色の経歴を持つ。まさに、理論と実践、デザインと技術といった一見相反するものを行き来してきた。

 その経験が体現するように、イノベーションは広く様々な領域にまたがり、連携し合っている。あえて分割するなら、多彩な情報からアイディアを見出す「0→1」の創出フェーズ、アイディアをかたちにする「1→10」事業化、そして世界に拡大していく「10→100」というプロセスに分けられるだろう。横田氏が得意とするのは「0→1」の部分、それが「1→10」「10→100」の部分にも広がりつつあるという。

 そうした中で、i.labが最も重視する方法論が「人間中心イノベーション」だ。これまでイノベーションは「技術革新」と翻訳されてきた。しかし、近年では技術だけでなく、社会や組織なども含めた広義での「革新」と位置づけられている。i.labもまた、人や社会に対する理解・洞察に思考の軸足をおいた方法で、アイディアで社会をよりよく改革することを意識している。

横田 幸信横田 幸信 氏(i.lab Managing Director)
東京大学i.school ディレクター。NPO法人Motivation Maker ディレクター。九州大学理学部物理学科卒業、九州大学大学院理学府凝縮系科学専攻修士課程修了、東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程中途退学。修士課程修了後は、野村総合研究所にて事業戦略や組織改革、ブランド戦略などの経営コンサルティング業務に携わり、その後、東京大学先端科学技術研究センター技術補佐員及び博士課程学生を経て現職。
イノベーション教育の先駆的機関である東京大学i.schoolではディレクターとして活動全体のマネジメントを行う。現在は、イノベーション創出のためのプロセス設計とマネジメント方法を専門として、大学及び産業界の垣根を超えたコンサルティング活動と実践的研究・教育活動を行っている。

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