成熟産業である不動産業で「年率平均36.6%」の成長と遂げるオープンハウス田口慶二氏が語る、デジタルシフト成功の鍵
午前最後のセッションのスピーカーとして、株式会社オープンハウス 情報システム部 最高情報責任者(CIO)の田口慶二氏が登壇した。オープンハウスは、センチュリー21のフランチャイジーとして1997年に設立し、2012年に自社ブランドとして独立した創業20年の不動産会社だ。年率平均36.6%という急成長を遂げており、その躍進を支えるためのデジタル化が大きな課題になっていると語る。
その急成長を実現させてきたのは、アナログながらシンプルなデータドリブンな取り組みだ。1人1人の目標をKPIとして定め、週次・月次で実績と比較し、それを鈍化させることなく実直に全体で行ってきた。しかし田口氏が入社した3年半前には、書類の多くが紙で回っており、決して十分な情報共有が実現できていなかった。
そこで事業拡大と共にシステム化を推進し、4ヶ月前にDomoも導入された。現在はGoogleと連携して400台以上の営業車両をIoT化し、営業担当者の日々の動きがすべて把握できる状態となっている。今後はそれらから得られたデータをDomoに連携させて、どのように活用させていくかが課題だ。その1つとして、「土地の仕入れ」「家を建てる」「家を売る」という事業活動の情報共有があるという。各活動が独立して動いており、上流下流、並行した活動の状態を把握するために週1回の経営会議を行っている。しかしながら、あくまで週単位で共有される情報であり、9割の確度で“みなし”ていたが、今後はリアルタイムかつ正確な数字で把握できるようになるというわけだ。
もともとは経営層からのリクエストであり、データに対しての意識は「数字が絶対」という創業当時からの企業風土から醸成されてきた。経営から現場に「難しいことを伝えていくため」にも数字が有効と考え、徹底したことも大きいという。
「現在、経営トップから現場の営業スタッフまで、すべて同じデータをリアルタイムで共有できるようになっている。そのため、何か問題が生じた時にはデータを共有した上で建設的な議論ができるようになってきた」と田口氏は社内のコミュニケーションに変化が生まれたことについて言及。その上でビジネス部門とIT部門のコミュニケーションについては「CIOはICTをツールと捉え、経営課題の解決方法を考える上で、自己否定を含めて多彩な解を考えることが大切」と語った。
今後は事業部や支部ごとでバラバラだったデータが連携することで、納期の短縮などが実現できれば、金利の都合上、収益にも大きなメリットが生じる。今後はマシンラーニングなども導入し、より戦略的なデータ活用を行っていく予定だという。またデジタル化の社内コンセプトとして、「インテリジェント インサイト」を掲げ、1つ1つの数字に対してどのようなアクションを行っていくか、各部署におけるデータ活用の実践が進んでいるという。