SDGsは「事業機会」「消費者インサイト」の宝庫──その先に「潜在市場」がある
──Japan Innovation Network(JIN)では、イノベーション経営を推進する経営者のコミュニティ「イノベーション100委員会」を経済産業省や株式会社WiLと共同運営し、企業内アクセラレーターとしてイノベーションを興こすための組織・人材づくりを支援するなど、日本企業のイノベーションの支援において目覚ましい活動をなさっています。
そのJINが、国連総会で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成を掲げた、オープンイノベーション活動「SHIP:SDGs Holistic Innovation Platform」に取り組まれる理由についてお聞かせください。
西口(一般社団法人Japan Innovation Network 専務理事):確かに、私たちが取り組むのは企業における「事業」のイノベーションです。なぜ事業に世界の目標「SDGs」が関係するのか、不思議に思われる方もいらっしゃるでしょう。
SDGsを詳しくご存知ない方に簡単に紹介すると、「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」とは、2015年9月に国連総会で193カ国の合意のもと、世界が目指すべき目標として採択されたものです。貧困や飢餓の撲滅や、教育、環境など多岐にわたって17目標と169ターゲットの具体的な達成基準が盛り込まれており、各国の代表が議論しただけでなく、世界で約720万人が投票した「MY World」の結果なども反映されています。
いわば、人類史上初めて国連に加盟する193カ国もの国が「2030年にこうなりたい」という意思決定をしたのであり、どんな未来予測よりも確実な姿を描いた、歴史に残る偉業だと思っています。今、その目標に向けて、企業もスタートアップも、NPOも取り組んでおり、結果として大きく世界が変わっていくことは間違いありません。事業創造の視点からは、「現在」と「未来の理想」との差分が大きければ大きいほど潜在マーケットが大きいということであり、イノベーションを生み出し、ビジネスを広げるチャンスが到来すると考えられます。
もちろん、これまでも「こうなるのではないか」という予測は頻繁にありました。しかし、SDGsはこれまでと違い、文明の繁栄を目指して、具体的に17目標を提示することによって、具体的な「設計図」を示したということがその意義なのです。2015年を目標にしていたMDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)は途上国が対象でしたが、今度は世界の全ての国が対象になります。そう考えれば、潜在マーケットとなりうる“差分”が国ごと、地球規模でどれだけ大きいか、想像できるのではないでしょうか。
今後はその差分を誰がどう担うのか、ピザのピースを取り合うような議論になってきます。つまり、争奪戦です。大きなチャンスではあるけれど、奪われる可能性もある。そんな時代がこれから到来しようとしているのです。