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SDGsを活用したオープンイノベーション

社会的価値を事業へ変換する“翻訳家”と“インテグレーター”に必要な「共通言語のSDGs」

【特別鼎談】Japan Innovation Network 西口尚宏氏 × 東京急行電鉄 加藤由将氏 × FiNC 溝口勇児氏

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 世界が取り組むべき目標として示された「SDGs(持続可能な開発目標)」。日本企業のイノベーション経営促進に取り組む一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)の西口尚宏氏は、「新たな事業創造のためのツールになりうる」と力説する。果たして事業会社の「SDGs」の受け取り方、活用の実態はどのようなものなのか。イノベーションの創出手法として注目される「オープンイノベーション」を軸に、東京急行電鉄でスタートアップのアクセラレーションに取り組む加藤由将氏、ヘルスケアのスタートアップとして大手企業との連携も数多く経験するFiNC代表の溝口勇児氏の両名を迎え、お話を伺った。

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“儲け方”よりも“フィロソフィーやストーリー”に投資と消費が集中する時代に「SDGs」の与える社会的インパクト

西口(一般社団法人 Japan Innovation Network専務理事)
 企業が成長し続けていくためにイノベーションが不可欠なのは自明の理であり、その手法として組織の壁を超えて連携する「オープンイノベーション」に期待が集まっています。しかしながら、なぜか上手くいかないという声も多く、理由の一つとしてあげられるのが「目標の不在」です。自社の技術やメソッドを活用することが先に来てしまい、「何を実現させたいのか」という目標を共有できないというわけです。特に技術大国と言われる日本ではその傾向が強いようです。

 2015年に国連総会で「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されました。貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、持続可能な開発のための諸目標が盛り込まれており、それが193カ国の合意のもと「世界の目標」として採択されたのは、実に画期的なことだと思っています。しかも2030年までという短期間に実現するために、17の目標・169のターゲットという具体的な達成基準まで設定されています。これを利用しない手はないでしょう。

 このような流れの中でも“ピンとこない”人には、私は、全世界が合意して2030年までに「こうなりたい」と定めた目標と現在の差分を図にしてお見せしています。これだけ大きな変化を起こすには、民間投資が動かなければ実現不可能であることは明らかであり、だからこそ、大きなビジネスチャンスなのだと。しかし、大きなイノベーションを起こせるような投資を呼び込むには「世に中に良いから」というだけでは不十分で、しっかりとビジネスモデルがあって初めて可能になります。事業モデルのデザインが何よりも大切なのです。

SDGs

 加藤さんは日本でも屈指のインフラ企業である東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)の事業責任者として、溝口さんは急成長中のスタートアップFiNCの代表として、こうした大きな枠組みを意識されながらお仕事に取り組んでいらっしゃる。そのお二人から見た、SDGsを実現する事業モデルのあり方について意見交換をできればと思っています。

加藤(東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 企画担当 課長補佐)
 ぜひ、いろいろご教示いただければと思います。東急グループとしては、SDGs採択以前から、「社会的価値」を意識しながら事業活動を行ってきました。利益の追求の延長線上にはない価値を世の中に提供すること、つまりは「CSV:Creating Shared Value(共有価値の創造)」を重視しており、社会課題を解決するという意味でSDGsとほぼ重なっているといえるでしょう。ただ理解として、そのCSVがSDGsを担保するものなのか、それともまた異なる関係性なのか、その辺りは意識したことがなかったのですが…。

西口
 SDGsが大きな傘のようにあって、その一部をCSVが担うというイメージですね。確かに民間企業の事業がSDGsの達成に大きく寄与することを期待されていますが、決して民間企業だけで実現できるものではありません。政府やNGO、スタートアップなどが共同で取り組んで初めて実現できるものだと思います。

溝口(株式会社 FiNC 代表取締役社長 CEO)
 私はSDGsの社会的価値重視というアプローチにとても大きなインパクトを感じますね。私の周りでも「IPO:Initial Public Offering(新規株式公開による資金調達)」ではなく、「ICO:Initial Coin Offering(仮想通貨を通じた資金調達)という資金調達方法を選択する人が増えてきているのですが、「儲かるかどうか」よりも「社会に貢献するかどうか」が投資の大きなモチベーションになっているようです。そして、企業側もICOなら、利益重視の他者のプレッシャーを受けることなく、自分たちのビジョンを貫くことができる。「何を大切にしているか」というフィロソフィーを大切にするようになったように感じます。

 極端に言ってしまえば、物質的なモノは一定の割合で“コモディティ化”して機能的には差異が小さくなってきています。だけど、なぜ「iPhone」が欲しいのか。iPhoneが持つ哲学や物語への共感性があるからなのではないかと。また、最近組織に身を置かずとも “個”としての活躍の場を広げられる人が増えています。アスリートであっても、例えばサッカーの本田圭祐さんもいろいろな事業に投資して自分でも事業を立ち上げています。情報がオープンになっていることもありますが、人や事業に共感し、行動する“個”が増えているのだと思います。

西口
 ビジョンの実現、つまりはSDGsの実現に本気になるほど、共感する人が増えて資金も集まり、事業にドライブをかけられる。さらに株式のように金銭的な報酬で報わなくてもよいとなれば、マクロで見ればかなり劇的な構造変化が起きる可能性がありますよね。まさに「人類史上初で画期的なこと」と言えるでしょう。

西口尚宏西口尚宏氏(一般社団法人 Japan Innovation Network 専務理事)

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