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クリステンセン「ジョブ理論」入門

スタートアップのためのジョブ理論

第11回

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企業は成長とともに顧客のジョブから距離ができてしまう。その必然的な流れについては前回お伝えした通りだ。そのことがスタートアップにとっての隙にもなる。今回はスタートアップがジョブ理論を活用することで成功までの道のりをなるべく短くすることができるのか見ていこう。もちろん、企業内スタートアップにも当てはまる話だ。

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なぜスタートアップはうまくいかないのか?

CB Insightsより

 アクセラレーション・プログラムを運営していると、数多くの起業家に会うことになる。ほぼ全員が何らかのビジネスアイデアを自信満々で説明してくれる。悪くないアイデアも少なくない(逆に、アイデアはないが、起業家になりたいという人もいる)。しかし、残念ながら多くのスタートアップはうまくいかない。しかもその割合は9割にのぼると言われている。既存品よりも優れた商品を開発したからといって、市場に受け入れるとは限らないし、画期的な技術を持っていても会社がうまくいくとは限らない。

 スタートアップが失敗した理由を分析すると(英語では検死を意味するpost-mortem という縁起の悪い名前が付いている)、どの分析結果を見ても「ニーズの不足」がトップに来る。仮に製品が出来ても、買いたい人が少ないというわけだ。

驚くべき事実だが、大きな会社も小さな会社も、歴史ある大企業もできたばかりの新興企業も、10件に9件は新製品の立ち上げに失敗している。製品を購入しそうな顧客がまったくいない市場に無理に新製品を押し込もうとして何十億ドルものお金を無駄に費やしている。”(『アントレプレナーの教科書』スティーブン・G・ブランク著)

作る前にニーズを確認する方法

 「売り出せば、必ず売れる」どんな商品も自信満々に市場に送り出される。だが、そのような結果になるのがたった1割とはどういうことだろう。きっと一般的なやり方が間違っているという意味ではないだろうか。その一般的なやり方とは、売れそうなものを作って、宣伝をして、販売をする、というものだ。

 スティーブン・ブランクの『アントレプレナーの教科書』やエリック・リースの『リーン・スタートアップ』などの名著の登場によって、製品開発に本格的に着手する前から顧客の声を聞くことが奨励されるようになった。日本ではまだこの考え方は常識というほど普及してはいないかもしれないが、シリコンバレーをはじめとする世界中のスタートアップ・エコシステムでは当たり前となっている。知っていたとしても、顧客の声を聞くというのが案外難しい。ジョブ理論に馴染みがあれば、さらに一歩踏み込んで「顧客のジョブを片づける」かどうか聞こうという気にもなるだろう。しかし、誰に聞くかという問題が残っている。

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

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