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クリステンセン「ジョブ理論」入門

ジョブ理論を使って「次のビジネス」を大胆予測する

第12回

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クリステンセンの理論でビジネスを予測する

 クリステンセン氏はジョブ理論を語る際に、ミルクシェイクの話を必ずすることはすでに述べたとおりだ。そして、ジョブ理論を使った新しいビジネスの話をする際には、「営業仕様」のクルマについて説明してくれる。

 アメリカのような車社会になっている地域では、営業マンは決まって営業車で担当地域を回る。保険の営業であれば、一軒一軒取引先を自家用車を運転して回る。打ち合わせと打ち合わせの間は、多少時間があるので、そういう時間はクルマのなかで過ごすことになる。路上に止めて昼寝をすることもあるかもしれないが、メールをチェックしたり、資料を作成したりと、仕事をすることも欠かせない。スマホで事足りることも多いが、パソコンを開き書類を作成することも必要だ。だが、今のクルマはパソコンを開くようにできていない。ハンドルが邪魔で作業には向いておらず、落ち着いて仕事をするには狭く感じるだろう。スマホの充電はできたとしても、パソコンの充電はできないといった問題もある。

営業自動車を売り出せ

 つまり、「クルマで外回りをする営業マンは、車内で仕事がしたい」という大切なジョブを抱えているにもかかわらず、作業性が低く、充電ができないという障害に直面しているのだ。狭い運転席でぎこちなく作業したり、わざわざカフェに立ち寄ったりという代替解決策を取っている人もいる。
このような状況を解決するようなイノベーションは考えられないだろうか?とクリステンセン氏は問いかける。「営業仕様車」を売り出せば、特に営業車を会社で用意する日本企業には需要があるのではないだろうか?

「ヘルスケア」の思考転換

 医療は巨大な産業だ。現在、医薬品だけをみても世界で120兆円以上、日本だけでも12兆円の巨大産業になっている。この医薬品以外にも医療機器やサービスも国の税金で賄う必要がある。GDPも伸びないなか、高齢者が増えるご時勢においては、いかに低価格で医療サービスを提供することができるのか、国にとっては重要な課題になっている。医療経済性というキーワードを掲げ、病気の治療に限られていたヘルスケアを未然予防や健康管理、さらには健康増進に拡大し、国や政府、企業、スタートアップがさまざまな取り組みを行っている。だが、ジョブの観点でみると、「未病」段階でのサービスを普及させるのはとても困難である。理由はこうだ。

  • 「健康でいたい」というジョブを誰もが持つものの、それを阻害する誘惑も非常に多い。
  • 誘惑の多くは、「美味しいものを食べたい」「楽がしたい」「リラックスしたい」などという、どれも強いジョブである。
  • 特に生活習慣病については、生活習慣と疾病率の関係が強く、「健康でいたい」というジョブを誘惑が勝るため多くの人にとって「健康でいたい」ジョブを片づけることが難しくなっている。

     したがって「もっと健康になりたい」、というジョブを片づけようとしている人はそれなりにいるが、「生活習慣病を防ぎたい」というジョブを片づけようとしている人はとても少ないと言えるだろう。つまり、真正面から「生活習慣病を防ぐ」ことを目指すチャレンジは意外にもユーザーの獲得に苦労することが予想される。

     ただ、「健康でいたい」というジョブが誘惑に勝つ方法は少なくとも2つある。

     1つは、一度健康を損なった後である。健康を一度失ったことのある人であれば、その有り難みは骨身に染みる。「再発を防ぎたい」とか「悪化を防ぎたい」というジョブなら多くの誘惑に勝る可能性がある。

     もう1つは、もっと優れた誘惑をつくることだ。スマホゲームのように食事管理ができたり、遊んでいるうちに体を鍛えたり、いわゆる「ゲーミフィケーション」を取り入れることである。つまり、単に「健康でいたい」だけでなく、「楽しく健康でいたい」ことを顧客ジョブとしてとらえることで、成功への道筋が見えるのではないだろうか。人が飽きることなく、何かに取り組むためのノウハウを持つ企業が登場すれば、このチャレンジを解決できるのではないかと考えている。

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

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