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行動観察でのサービスレベル向上は「組織文化」はカギ

大阪ガス行動観察研究所株式会社セミナーレポート:第2回

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飲食店における「サービススタンダード」の構築事例-触れないサービスを可視化する

 それでは、モノとはいろんな意味で違う、「サービス」ではどうだろうか。人の経験と勘に頼りがちな「サービス」は、提供と同時に相手に消費される「同時性」、形のない「無形性」、その日によって評価が変わる「変動性」、消えていく「消滅性」という特性を持つ。それゆえ在庫したり、事前に確認したり、ということができない。これらの特性のため、人の心に残るものであるにもかかわらず、サービスクオリティの維持・向上は大変難しいと考えられる。

 そんなサービスクオリティの標準化を図り、自社のサービススタンダードとして浸透させる。その目標のもと、行動観察を導入した飲食店の例が紹介された。

 施策を行った飲食店が持っていた「サービスマニュアル」は手順を示し、タスクを明確にした内容であった。一方、顧客満足を生み出す「サービススタンダード」はスタッフの意識や行動が重視されるものであり、より付加価値を高めることが目的となる。構築方法は「現状把握」「サービススタンダード作成」「サービススタンダード分析」の3ステップだ。

1:現状把握

  • 現状のサービス幅を把握するため、各スタッフごとに行動傾向をまとめる。
  • 顧客のサービス経験を時系列で「接点」「感覚」「認知的評価」「感情経験」で分析。
  • サービスの枠組みを把握するために、場面における目的設定を行い、手順のフレーム

としてまとめる。

 以上の流れにおいて、「サービス実態」という事実の抽出や顧客経験の可視化が進み、現状の理解や枠組みの把握ができた。この作業の中で調査員が現場を実感することで当事者と共感が生まれ、サービススタンダードを考えるうえで重要な信頼関係が構築できたという。

2:サービススタンダード作成

 報告書を提出し、上層部や管理者と調査員の10名が集うワークショップを実施し、各場面ごとにどういう考え方を重視するか、具体的にどう行動するか、を議論した。

 さまざまな立場の関係者が一同に集まる意味は大きく、さらに、観察を実施した研究員が参加することで心理学などの知見に基づいて解釈したりアイディアを出すことができた。

 ここで整理するのは2つ。顧客ニーズや顧客感情ゴール、そして提供側の目的に合わせた「サービスコンセプトの明確化」、そして何をすべきかという「サービスアクションの設計」である。特に前者は企業理念に立ち戻って考えることが大切だという。そして、スタンダードとしての行動が、新人と中堅のトータルで183項目得られた。

3:サービススタンダード分析

 183項目を行動要素として「言語」「動作」「表情」「声のトーン」「視線」に分類を試みた。その結果、中堅では言語45%、動作40.7%となり、この2つががサービスに大きく関与していることがわかった。特に、言語の%が動作を上回っているところが重要であり、マニュアルとの違いを表していると上層部が述べた。

 さらに「安全・衛生」「清潔さ」「便利さ」「タイムリーさ」「正確さ」「丁寧さ」「あたたかさ」「気配り」の8項目で分類したところ、「丁寧さ」「正確さ」「便利さ」「気配り」の4項目で75%を占めた。ただし、サービススタンダードは顧客とスタッフの接点における目指すサービス行動であるので、「安全・衛生」「清潔さ」に対しては、顧客との接点以外で行動がとられていることがわかった。さらに、顧客に提供したい感情経験を「マズローの欲求5段階」を用い考察すると、「安心感」「快適さ」の感情は主に物理的側面のサービスによりもたらされ、顧客の「安全と所属の欲求」を満たし、「満足」につながり、さらに強い「気分がよい・楽しい」「喜び」の感情は、主に心理的側面のサービスにより「承認の欲求と自己実現」を満たし、顧客の「大変満足」という感情を生み出すという関係性が示唆された。

サービス・スタンダード分析▲ サービス・スタンダード分析

 物理的・心理的側面にあたるサービススタンダードの項目の割合は、新人と中堅ではほぼ同じになった。つまり、より高いサービスを提供するためには、より高い欲求を満たす心理的ばかりでなく、基本的な欲求を満たす物理的な部分においても向上が望まれるということを示している。

 以上に渡るサービススタンダード構築プロセスの効果として、松本氏は「顧客のニーズや感情のゴールを見える化できたこと」「新人・中堅のスキルレベルに対応するものができたこと」そして「フェーズ別などに具体的な行動に落とし込めたこと」をあげ、それらを総合することで顧客が満足するサービスの提供ができると語る。そして、副次的な成果として、関係者が参加することでサービススタンダードに対する愛着と当事者意識の醸成が叶ったことを挙げる。この心理面の変化は、サービススタンダードの浸透に不可欠なコミットメントを強化するという。

次のページ
「サービススタンダード」を浸透させるための考え方と方法

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