学んだ誰もが企画・デザインできる「汎用システムデザインプロセス」
「トータルなシステムとしての価値」をどのように考えるか。山岡氏はあるカフェの例を出して説明する。そこでは古民家の味わい深いスペースにリラックスした空間を作り、和菓子を美しい器に盛りつけて提供している。余った抹茶には無料でミルクを注ぐというサービスもさり気なく行われ、家族で快適に過ごした山岡氏は大満足で、通常なら割高ととも思われる支払いを済ませたという。
山岡氏は「こうした新しい価値を生むサービスこそ、日本が食べていく道ではないのか。この発想は和菓子という素材を見つめていても生まれない。顧客の価値から発想することで生まれるものだ」と解説する。とはいえ、常に新しい価値を創造しても、真似されるなどして一般化すれば高い価値を保持することはできない。常に新しい価値を見出すための努力が必要なのだ。そのアプローチ例として、顧客の価値を「一般価値(レストランで食事を楽しむ)」と「特別価値(レストランで感動を与える)」に分類し、それぞれメインとサブの価値を振り分けていく方法や、トップダウンまたはボトムアップによるコンセプトの定義の考え方などが紹介された。
新しい価値の一般化、コモディティ化が早期化しているなか、迅速に新しいサービスを創り出していくためには、「コンセプトや方針を最初に明確化すること」が重要だ。甘いコンセプトのままでは発散し、最終的なアウトプットまでに時間がかかり、脱線することもある。しっかりとコンセプトを見極め、そこから論理的に詳細の要件に落とし込めば、一気にアウトプットまで進めることができる。従来型のように企画者やデザイナーの属性に依存したものではなく、面倒ではあっても論理的・工学的に行うことで「誰でもスムーズにできる」ようになる。それが「汎用システムデザインプロセス」の考え方だ。