アル・ケッチァーノのオーナーシェフ奥田政行氏が語る、食材・調理法への科学的アプローチは「思考→異分野共創→データ化→舌へのフィードバック」
料理やキッチン、食の未来について語り合い、世界的なイノベーションへと展開することを目的に、2015年より米国でスタートした「Smart Kitchen Summit」。日本での開催は2017年8月に次いで2回目となり、フードテック企業やキッチンメーカー、料理家など食に関するプレーヤーはもちろん、起業家、投資家、デザイナー、そしてビジネスクリエイターなど、様々な分野から多くのプロフェッショナルが集まり、2日間に渡って熱気あふれるイベントとなった。
中でも注目を集めたセッションが、「サイエンス視点で見る料理の楽しさ:食の科学とスマートキッチンの出会い」をテーマにした、「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフの奥田政行氏と、宮城大学食産業学群 教授の石川真一氏という異色の組み合わせによる講演である。
まず登壇したのは、山形県鶴岡市の人気イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフである奥田政行氏。『「だし」でつながる世界のUMAMI』と題して講演を行なった。奥田氏は世界的な料理コンテストでも多数入賞するなど、日本で最も成功しているシェフの一人だ。独自の料理理論や地域の食文化を盛り込んだ著書『食べもの時鑑』がグルマン世界料理本大賞を受賞するなど、食材や調理法に関する徹底した研究でもよく知られている。
奥田氏は自身の成功の秘訣として「一人ひとりの容貌や好みなどに合わせた味付けをしたこと」をあげ、「髪や目の色、体格などで好みの味付けがだいたいわかる。おそらくデータ化すれば、一定の傾向が見えるのではないか」と語る。
そうした奥田氏の食材や調理法に対する科学的なアプローチ法は、雪国山形で育まれた。雪に閉ざされる中、キッチンにこもって食材や調理法に向き合う「思考の時間」。その思考をもとに、飲食業界の中では出会えない“異業種”の科学者や研究者との出会いがあり、データ化による新たな気付きが生まれ、それらを再び「舌の上」で検証するうちに体系化されてきたというわけだ。