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「インサイトフルな組織」とは?

世界が注目する「ナッジ」と「インサイト」の密接な関係──“デビルインサイト”に着目すべき理由

第4回

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 前回は、最初に「オポチュニティ」(自社のビジネスで解決できそうな、消費者が潜在的に感じている問題)を発見することが、インサイトを活かしたビジネスプロセスのために重要であることを説明した。今回は、近年、欧米諸国でインサイトが政策・行政レベルで注目されているという現状、行動経済学で注目される「ナッジ(Nudge)」とインサイトの関係性を解説する。

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人間が強制的にではなく、自発的に行動するよう促すアプローチ「ナッジ」が、“非合理的な人間の経済行動”を解き明かす

 「ナッジ(Nudge)」という言葉をご存じの方も読者には多いのではないだろうか。直訳すると「ひじで軽くつつく」という意味である。しかし、ここで言うナッジとは、行動経済学の理論に基づき、「人間が強制的に動かされるのではなく、自発的に行動するように促すアプローチ」を指す。そうやって人間を言わば誘導しようとする際に、インサイトの考え方が用いられているのである。

 行動経済学は、その第一人者であるリチャード・セイラー教授が2017年にノーベル経済学賞を受賞したことで改めて注目が高まっている。理解されている方も多いと思うが、改めて行動経済学について簡単に触れておきたい。

実践行動経済学実践行動経済学』(リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン 著/日経BP 刊)

 行動経済学では、旧来の経済学とは異なり、人間が理性的とはいえない行動をとるものだという前提に立つ。そして、さまざまな「認知バイアス」が要因となって、例えば「消費者は安くて良い物を選ぶ」といった前提を覆す、さまざまな非理性的な経済行動の実態をあぶり出し、解き明かしている。

 セイラー教授は、映画「マネー・ショート」に本人役で出演して行動経済学の物の見方を説明している。

 バスケットボールの試合で、ある選手が3ポイントシュートを決めたとする。次に同じ選手が3ポイントシュートを試みる際にシュートが成功する確率は、平均に回帰するので失敗する可能性が高いと考えるのが合理的である。しかし、多くの人は「その前に決まったのだから次のシュートも決まる」と非合理的な期待をしがちである。そして、投資についても同様に非合理的な思考に基づいて判断が下されることが実は多い。

 他にもさまざまな認知バイアスが多くの行動経済学の研究者により実証されている。それほどに人間が非合理的な判断をして行動をしているという実態は、建前や理屈ではない「無意識」に着目するインサイトの考え方につながる。

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この記事の著者

大松 孝弘(オオマツ タカヒロ)

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