“間違った不満”に騙されず、“真の不満”を知れば問題を解決できる
現在、「不満を知る」ことは、一見簡単になったように思える。
SNSの書き込みを分析したり、簡単なwebアンケートで回答を募ったりすれば、人々の声は短期間で膨大に集めることができる。お客様相談室やカスタマーセンターへの声、営業であれば取引先、人事部門であれば従業員のアンケートなど、関係者や当事者に質問することも以前より格段に手軽にできるようになった。
しかし、そうして集められた声や意見は、“真の意味での不満”と言えるものだろうか? 断言するが、それは間違いである。
マーケティングの事例であるが、マクドナルドのケースを見てみよう。
当時、マクドナルドが行っていた消費者向けのリサーチにおいては、「マクドナルドはヘルシーではないから行きたくない」「サラダを食べたいのにそのようなメニューがない」といった声が多く寄せられていた。
このような意見を“解決すべき不満”と考え、その解消策として「サラダマック」が発売された。しかし、この商品は不振に終わり、ほどなく販売終了となったのである。
この後、新たな商品が投入された。それが「クォーターパウンダー」や「メガマック」といった、ボリュームたっぷりの牛肉を食べられるハンバーガー。これが大成功を収めた。多くの読者も記憶されているだろう。
マクドナルドに対して「ヘルシーなものがない」「サラダを食べたい」といったお客様の声をそのまま受け取った不満は、実は表層的な“間違った不満”でしかなかった。そうではなく、本当の不満は「マクドナルドでガッツリ肉をほおばりたいのに、今ある商品では物足りない」だったのである。
不満を解消することは、ビジネスにとって重要なテーマであることは、改めて言うまでもない。「消費者の不満」の解消が重要なマーケティング分野や新規事業開発だけでなく、「ユーザーの不満」が重要なR&DやUI/UX開発のデジタル部門、「社員の不満」が重要な人事、「株主の不満」が重要な経営企画・IRなど、どのような領域においても、不満の解消は新たな機会を作る起点になる。
一見もっともらしく見える表層的な「間違い不満」に騙されて、誤った選択をしている事例が、後を絶たない。先に挙げたようなあらゆるビジネスの領域において、「表層的な不満ではなく、真の不満を解消する」ことこそ、考え、実行すべきなのである。
このような事態を招く背景にあるのは、現代は豊かになり、ほとんどの領域で一定の満足度は得られるようになったことである。商品はもちろん、経済的な豊かさも一定の基準に到達している。そして、表層的で言語化しやすい不満ばかりが、ネット等を通して大量に簡単に収集され、その一方で本質的で意識しづらい不満は表に出にくく収集も難しくなっているのである。