第三者の違和感から「障害・代替解決」をはかる
JOBSメソッドが、製品ではなく、ユーザーが本来やりたいジョブに着目することは分かって頂けたと思います。
ユーザー本人のジョブに着目することができたら、少し見方を変えます。ユーザーの視座から一歩離れて、ユーザーを見ます。すると、ユーザーがジョブをこなすうえで、何か「違和感」がないかを探します。見つけるべき「違和感」というのは、そのジョブをこなすことを難しくしてしまっている「障害」や、遠回りな「代替解決法」です。本人はやりたいジョブなので、不満も感じず、自然に行っているかも知れません。しかし、もう少し上手に、手際よく、簡単に、安く、楽しく、カッコよく、行うことが出来たらどうでしょう。そもそもやりたかったジョブがよりよい状態でできるようになるわけです。これこそ「潜在的なニーズ」と呼んでもいいのではないでしょうか。
今となっては当たり前になった絆創膏、バンドエイドが発明された経緯もこの違和感が元となりました。ジョンソン・エンド・ジョンソンの社員ディクソンにはとても不器用で、料理をするたびにケガをしてしまう奥さんがいました。ケガをするたび、ディクソンは奥さんの手当てしてあげていたのです。バンドエイドがない時代ですから、ガーゼを切り、キズに当てて、テープで押える、という作業になります。これは一人では無理な作業です。何度もディクソンが手当しているうちに、独りでも出来る方法はないかと考え、最初からテープの真ん中にガーゼを当てておく方式を思いつきました。今となっては、この絆創膏はキズ治療の当たり前になっており、全世界に普及しています。まさにイノベーションの好例と言えるでしょう。
JOBSメソッドの中核となるのはユーザー本人にとっての「Job」とその目的である「Objectives」、さらには違和感を探すための「Barriers(障害)」と「Solutions(代替解決法)」という4つの要素です。これらの視点を持ちながらユーザーの身になりつつ、ユーザーを第三者的に観察することが新たな価値を生むニーズ発見に繋がります。