プラットフォームを利用したサービスだからこそ重要な、量より質のデータ活用
音声UIで顧客体験を向上させ、何度も繰り返し使いたくなるようなサービス設計ができたとしても、そこから収益につながらなければ継続的にサービスを維持することは難しくなる。では、どのようにして音声UIから収益をあげればいいのだろうか。
今ある事例の多くは、既存の店舗等に送客する新しい手段が手に入ったり、待ち時間を解消したりするといった、顧客とのタッチポイントの強化や既存チャネルへの送客という、既存ビジネスの補完モデルである。冒頭にあげたスターバックスの音声UIを使ったサービスもこれに当たる。また、Spotifyなどのサブスクリプション型のサービスと音声UIとは相性が良いと言われている。しかし、これも新しく収益が生まれた事例ではない。
今後どんどん生まれてくるだろうと予想できるのは、広告モデルである。その際のヒントは既存の事例からも得ることができる。例えば、インターネット環境を利用してラジオを無料で聴けるradikoは、今年7月にオーディオアドの実験を開始した。radikoは今まで地上波の広告をそのままネット配信でも流していたが、その広告の一部でターゲットごとに異なるものを配信し、収益化を目指す取り組みを始めたのだ。広告に付加価値をつけ、質をあげるという考え方である。ここで注目すべきは、データの活用方法である。radikoはリスナーの属性やラジオの視聴方法など、さまざまなデータを取っており、データを最大限利用しているところが鍵となっているのだ。
同じように、スマートスピーカーでのビジネスモデルを考える際には、そこで得られるデータをどう活用するか、という観点が欠かせない。そしてこれは、広告モデルだけに限った話ではない。なぜなら、Amazon、Google等のプラットフォームを利用してサービスをする場合、データ自体は独占的なものにはならないという現実があるからだ。つまり、むしろ重要なのは、得られるデータからどう顧客のインサイトを生み出すか、自社ならではの分析や活用の視点の発見にあると言える。そのためには、自社ですでに持っているデータと組み合わせるといった仕組みの構築もポイントとなるだろう。