デザインファームDesignit創業者が語る、デザイナーが向き合う「倫理」と「デザインの影響力」

 イノベーションを自ら生み出し社会に向けて価値を創出する能力を持つ「メディア・イノベータ」の育成をミッションとする、慶應義塾大学のメディアデザイン研究科。さる11月5日に、同科が主催するイベント「KMD Serendipity Series-偶然の出会い-」が行われた。講師として招かれたのは、デザインファームDesignitの創業者で、現在は同社社長のミカル・ハルストラップ氏。「Designning a Human Future」と題し、デザイナー視点のデジタルシフト、デザインが持つ役割の変化、そしてサービスデザインをする上での心構えと、デザインが担う未来を語った。

[公開日]

[講演者] ミカル・ハルストラップ [取材・構成] マチコマキ [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 テクノロジー

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プロダクトからサービスデザインへシフト。iPhoneが変えたデザイン業界

デザイナーは、物事や世界を変えたいという思いに対して情熱を傾けていかなければなりません。見て美しいもの、社会の構造を変えなくてはいけないもの、このようなことに関心がないということであれば、デザインの業界へ入ってはならないのです

 冒頭、このように切り出したハルストラップ氏。まずは、1991年にDesignitを創業後、およそ30年の間に起きたデザイン業界をとりまく環境の変化について、自らのキャリアを振り返りつつ語った。

 ハルストラップ氏は、産業プロダクトのデザイナーとして、電話やインシュリンペン、オーディオや電気製品をデザインしていた。当時から、デザインに体験を追加することを考えていた同氏は、JBLのスピーカーをデザインするときに照明を追加した。「音がどんな風に見えるのかを表現したいと考えていました。使って美しいもの、感情を動かすものをデザインすることが、デザインなのです」と語る。

Designit©Designit

 しかし、2007年頃を境にデザイン界は大きくシフトする。iPhoneの登場だ。

 さまざまな業界に刺激を与えたiPhoneは、当然デザイン界にも変革を起こす。プロダクトデザインではなく、すべてスクリーン上で起こるサービスのデザインが求められる時代へ突入していった。

 サービスをデザインすることで起きた変化。そのひとつに、これまで接点のなかった金融や保険などの領域が、フィンテック・インシュアテックとしてデザインの対象になったことが挙げられる。

Designit©Designit

 その事例として紹介されたのが、デンマーク最大の銀行・ダンスケ銀行だ。早くからモバイル銀行をスタートした同行は、車輪のような円形型の新しいナビゲーションシステムのデザインを導入した。このデザインは流行し、各社多様な機能を追加したが、結局のところアプリはシンプルなデザインが望ましいという結果に落ち着いている。

ミカル・ハルストラップミカル・ハルストラップ | MIKAL HALLSTRUP
Designit ファウンダー/チーフヴィジョナリーオフィサー。コペンハーゲン生まれ。インダストリアルデザイナーとして活動したのち、Desgnitを設立。デザインとテクノロジーのユーザーセンタード・デザインを得意とする。IKEAやシスコ、vodafoneなどのクライアントを次々と獲得してきた。

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