プロダクトからサービスデザインへシフト。iPhoneが変えたデザイン業界
デザイナーは、物事や世界を変えたいという思いに対して情熱を傾けていかなければなりません。見て美しいもの、社会の構造を変えなくてはいけないもの、このようなことに関心がないということであれば、デザインの業界へ入ってはならないのです
冒頭、このように切り出したハルストラップ氏。まずは、1991年にDesignitを創業後、およそ30年の間に起きたデザイン業界をとりまく環境の変化について、自らのキャリアを振り返りつつ語った。
ハルストラップ氏は、産業プロダクトのデザイナーとして、電話やインシュリンペン、オーディオや電気製品をデザインしていた。当時から、デザインに体験を追加することを考えていた同氏は、JBLのスピーカーをデザインするときに照明を追加した。「音がどんな風に見えるのかを表現したいと考えていました。使って美しいもの、感情を動かすものをデザインすることが、デザインなのです」と語る。
しかし、2007年頃を境にデザイン界は大きくシフトする。iPhoneの登場だ。
さまざまな業界に刺激を与えたiPhoneは、当然デザイン界にも変革を起こす。プロダクトデザインではなく、すべてスクリーン上で起こるサービスのデザインが求められる時代へ突入していった。
サービスをデザインすることで起きた変化。そのひとつに、これまで接点のなかった金融や保険などの領域が、フィンテック・インシュアテックとしてデザインの対象になったことが挙げられる。
その事例として紹介されたのが、デンマーク最大の銀行・ダンスケ銀行だ。早くからモバイル銀行をスタートした同行は、車輪のような円形型の新しいナビゲーションシステムのデザインを導入した。このデザインは流行し、各社多様な機能を追加したが、結局のところアプリはシンプルなデザインが望ましいという結果に落ち着いている。