社内のコミュニケーションから生まれるナレッジを活かすため、将来的には、AI、botの導入を検討する
――Slack導入後に、社内のコミュニケーション環境はどのように変化したでしょうか?
大松:最初に話した「ナレッジ基盤の構築と活用」ということですが、以前は、メールとカレンダーを使ったコミュニケーションが主体でした。これはいわば「一方通行」なんです。一人が数百人に語りかけている感覚なので、届いているのかわからない。メールの一方通行配信を繰り返すことで、メンバーが情報に対して受動的になってしまう可能性もあります。でも情報流通を活性化させ、集合知を活用するには、一人ひとりが能動的にアクションしなければならない。いまは、情報を発信する「アナウンスチャンネル」、互いにシェアしあう「シェアチャンネル」、リアルタイムで情報交換、ディスカッションする「ライブチャンネル」と切り分けて、オフィシャルな情報発信はアナウンスチャンネルにして、ライブチャンネルでは部門全体会議をライブ配信しています。ライブ中にも盛り上がって情報交換が行われていますね。そこで生まれるナレッジ創発がかなり増えてきています。
橋本:情報システム担当としては、そのコミュニケーションの状況を把握して、各部門の状態を知ることができる。特に感じるのは、社内の情報共有の迅速化です。以前は、経営層からメッセージをメールで発信しても、それが読まれているか、わからなかった。Slackならそれがわかるし、伝わっていなければ対策が打てる。絵文字ですぐリアクションができることもいいんだと思います。メールは返信するのもけっこう大変ですが、絵文字なら簡単です。反応があること、簡単に反応できることが大切なんだと思います。
――いま、導入から半年ほど経過しています。今後、どのように活用を広げていきたいかといった構想はあるのでしょうか?
大松:まだ試作段階なのですが、「ヘルプチャンネル」の活発化を図っていきたいと考えています。Slackに関するヘルプ、経理に聞きたいこと、情シスに聞きたいなど、「問い合わせ機能別の専門チャンネル」は既に整備され、機能しています。それに加えて重要なのは「誰に聞いたらいいかわからないことを聞くチャンネル」が組織に根付き、会社の文化となることです。「こんな事例を知りませんか」「こんな話聞いたことないですか」「提案のアイデアに詰まっているので、一緒に考えてくれる人いませんか」といった、レスキューチャンネル「Res:Q(レスキュー)」を立ち上げ、質問した人、回答した人が双方に評価され、個人個人が高めあう取り組みを進めています。
もう一つ、これはナレッジ基盤の話にもつながるのですが、アーカイブ性を高めたいと思っています。先程の質問などのヘルプも以前はメールでやっていました。メールだとシェアできなくて同じ質問が何度もきていたんです。ならば、そういうSlackでやり取りした内容を分析して、社内ウィキを構築できるのではないかと思っています。
橋本:Slackでは、他のアプリとの連携に強みがあります。メールの内容、カレンダーの予定、他のタスク管理ツールのメッセージをSlackで見ることもできます。そのSlackの強みを上手く活用することで、社内コミュニケーションにおけるメールや他のツールの利用は減っています。ただ、いままでのメールでのやりとりがSlackに移行したと言うだけで満足してはいけません。全社導入の当初目標のSlack活用定着化は達成しているので、そこから先、どんなチャンネルが活性化しているのか、更に情報を活かしていくためにどうするかを考えていく必要があります。その鍵になるのが、AI、botかもしれないと思っています。できることは自動化していく。単純な質問にはbotが答えていてもいいでしょう。やり取りの内容をAIで分析していくことも大切だと思います。
――本日はありがとうございました。
【取材を終えて】
電通デジタル社内を見渡すと、机上のモニターに、スマートフォンに、ノートパソコンに、Slackのステッカーが貼られている。これはトレーニングを、受講した記念に配られているものだ。ほかにもTシャツや靴下などのアイテムもあるという。
この光景を見ると、社内でSlackが当たり前のツールとして定着していることがよく分かる。まるで空気のような存在としてSlackが根付きつつあるのだと感じられる。