エクスペリエンスマネジメント(XM)とは何か
クアルトリクス(Qualtrics)は米ユタ州に本社を置くアンケート・リサーチのソフトウェア企業。急成長するユニコーン企業として注目され、2018年の2月にカントリーマネージャーを据え、日本で本格的にビジネスを開始した。先ごろ(2018年11月)にSAPによる買収が発表され、この1月に完了し市場関係者を驚かせた。買収金額は80億米ドル(約9120億円)に登る。
同社は自社の事業分野を、「エクスペリエンスマネジメント(XM)」と定義している。「エクスペリエンスマネジメント」という言葉は、まだ日本では馴染みが少ない。まず「エクスペリエンス」という言葉を振り返ってみよう。米国の経営学者バーンド・H・シュミットの『経験価値マーケティング』(ダイヤモンド社)が日本で出版されたのが2000年代の初め。以降、製品の価値を機能や利便性だけで捉えるのではなく、心理的な心地よさや使い勝手など、体験によって得られる価値とみなすカスタマーエクスペリエンス(CX)という考え方が浸透してきた。
クアルトリクスの「XM」はこの「エクスペリエンス」の考え方を、顧客、従業員、製品、ブランドに適用し、「カスタマーエクスペリエンス(CX)」、「従業員エクスペリエンス(EX)」、「ブランドエクスペリエンス(BX)」、「プロダクトエクスペリエンス(PX)」を単一のプラットフォームで管理・分析するサービスである。
EX向上なくして、CX向上はない
カスタマーエクスペリエンス(CX)の調査の分野で評価を得て急成長を果たしたクアルトリクスだが、最近では「従業員エクスペリエンス(EX)」の分野でも実績を増やしているという
顧客調査の方法論が、以前の「顧客満足度(CS)」から「カスタマーエクスペリエンス(CX)」へと進化してきたように、従業員の調査の分野でも、「従業員満足度(ES)」から「従業員エクスペリエンス(EX)」への流れがあるという。
米国で、従業員の満足度に対する調査が盛んになってきた背景には、人材のリテンション(維持)と確保が成長を左右しているという状況がある。人材を確保、維持するためには、給与などの物質的な側面だけでなく、モチベーションのより深い面に目を向ける必要がある。「最新のテクノロジーに触れること」「組織の文化や制度が快適であること」「より良い仲間、チームで仕事ができること」などが重要な要素となるのだ。
最近では顧客を対象にCX調査を導入し、その流れで従業員を対象にEX調査を行う企業様が増えています。多くの企業が、“従業員の満足度が上がらないと顧客の満足度を上げることができない”ということに気づいたからです。
日本ではこれまで従業員調査は人事部、顧客調査はマーケティング部門というように、まったく違う導入部門が牽引してきた。米国でも、まだその流れは残ってはいるが、エクスペリエンスマネジメント(XM)では、組織を横断して調査をおこなうプロジェクトも増えているという。
しかし「XM」の目的は「調査」そのものではなく、その後の「改善」であることを、熊代氏は強調する。
それぞれの現場の事業責任者が、自分たち部門のメンバーの状況を把握し、改善していくことが目的です。ここで大切なことは、“意見を言えば聞いてもらえる”という納得感を従業員に与えるということです。そのために、調査による集計結果を可視化して上司や組織のメンバーに共有を行い改善のアクションにつなげていくのです。われわれのツールは、その改善へのアクションをサポートします。