企業向けサプライチェーンが変わった1990年代、消費者への販売チャネルが変わった2000年代初頭
ITが企業の内部に広まり、ERPシステムも現れた1990年代
ITの歴史を振り返ると、1990年代は、業務効率化のためのデータの統合・管理が中心となっていた時代です。生産管理・販売管理・購買管理・在庫管理・人事給与・会計など、部門毎にバラバラに分かれていたデータを統合し管理する「基幹システム」を構築し、業務効率化を目指していました。その後、統合したデータを分析し、資源を適切に分配するERP(Enterprise Resource Planning)システムが現れます。まだインターネットが主流となっておらず、各部門から集められたデータは、自社内のサーバーで管理されていました。
この時代のITが目指していたのは、BPR(Business Process Re-engineering)による企業全体の生産性向上です。日本でも、バブル崩壊後の不況にともなう人件費削減の必要性もあり、ERPの導入が積極的に進められました。しかし、高い導入コストが仇となり、削減した人件費ほどの効果は得られなかったようです。
2Gと携帯電話の出現によってITが消費者の手にも渡る
企業内の情報管理や効率化で繁栄していたIT産業は、1990年後半に大きな転換期を迎えます。モバイル通信環境が、アナログ音声通話のみだった1G(第1世代)から2G(第2世代)へと移行し、メールやインターネットにも対応するようになります。NTTドコモが1999年にサービスを開始したiモードの爆発的な普及に象徴されるように、携帯電話でのインターネット活用へと時代は移っていきます。この転換期には、企業と消費者が通信可能となる環境が整備されます。
リテールのみであったBtoCの経済活動は、インターネットを介した取り引き(Eコマース)へと拡大していきます。多くのインターネット関連企業が誕生し、多額の投資がインターネット関連企業へと集中しました。その中心となったのがシリコンバレーです。しかし、アメリカを中心に過度な投資がかさみ、2001年にITバブルは崩壊をします。結果としてITバブルは崩壊したものの、生き残ったAmazonやGoogleを中心に、ITは進化を続けていきます。
2000年前後のテクノロジーの進化により、ITは企業内部の効率化を目的にしたBtoBの産業から、消費者への新たな販売チャネルを持った産業へと拡大していきます。その代表が、後にAmazonが主導権を握ることになるEコマースと、Google躍進の原動力となるインターネット広告です。ITバブル崩壊を生き残ったAmazonとGoogleは、この頃にはIT産業における優位の基礎を築いたといえるでしょう。