ABEJA Platformで簡素化した、AI実装を遅らせる“10のプロセス”
ABEJA執行役員の菊池佑太氏が登壇し、ABEJAのプロダクトについて紹介した。ABEJAは、2018年に多様な業種でAIの社会実装を加速するPaaS「ABEJA Platform」をリリース。そして、PaaS上で、各業界に特化したSaaSをパートナーとの連携のもと開発・提供する。SaaSはより安価に手軽に導入が可能だが、パッケージであり、個社別の要件に応じてカスタマイズするといった自由度は低い。それを解決するものとしてPaaSがあり、AIの知識・技術を持つ人が要件に合わせて実装できるようになっている。
SaaSの具体的なソリューションとして、人工知能を活用した店舗解析サービスである「ABEJA Insight for Retail」が紹介された。カメラの画像から収集した来客人数や入店数など様々なデータを分析し、可視化することにによって、勘と経験に加えデータに基づいた意思決定を支援するというものだ。2018年はリピート推定や店舗内の導線分析機能が追加され、さらなる取得可能なデータの幅を広げている。ABEJA Insight for Retailは、2019年3月時点で40TB/dayのトラフィックデータ量を扱い、過去累積で約700店舗に導入、約2億人を解析してきた。まさにWebで行われていた顧客行動分析が、リアルでも可能にしているわけだ。
そして、AIの開発運用基盤である「ABEJA Platform」について紹介された。ABEJA Platfotmは非常に手間のかかるAIの実装に必要不可欠な10のプロセス((1)データの取得、(2)蓄積、(3)確認、(4)教師データ作成、(5)モデル設計、(6)学習、(7)評価、(8)デプロイ、(9)推論、(10)再学習)を容易に実行できるようにしたPaaSだという。たとえば、本来AIエンジニアは、AIモデルの設計や精度向上のための学習に注力したい一方で、AIモデルの開発以前に、データの取得におけるセキュアな環境の構築や、学習のための計算リソースの確保など、なかなかに面倒なプロセスへの対応が避けられない。。そうした手間のかかるプロセスを簡易に実行できる基盤としてABEJA Platformを提供することで、AIの開発・運用を効率化し、より多くの人・企業がAIの社会実装を推進できる世界を目指すという。
ABEJA Platformによって効率化される10のプロセスの中で、2018年特に追加・強化されたプロセスが教師データ作成を省力化する「ABEJA Platform Annotation」(アノテーション)である。AIのモデル開発に必要不可欠な教師データの作成には、人手は非常に手間がかかる。ABEJAは10万人ものアノテーションをする人材のネットワークや品質管理の仕組みを提供することによって、精度の高い教師データをスピーディに生成できるようにし、より多くのAIエンジニアがモデル設計や学習などに注力できることを可能にしているという。。今後のアップデートでは、AIが自動推論して提案し人間が修正するという省力化が進み、「AIで必要なデータをAIで作っていく」という状態を実現していくことを予定している。他に、デプロイ、推論、再学習のそれぞれの機能についても強化されている。
そして今回追加されたのが、SaaSとPaaSの間にある「MLaaS(Machine Learning as a Service)」と呼ばれるレイヤーだ。パッケージ化されたSaaSでは要件に合わない一方で、PaaSを直接扱ってAIのモデル開発ができるほどの知識・技術がない場合でも、活用しやすい仕組みになっており、“AIの民主化”を推進する重要な布石としてABEJAとしても力をいれていくという。その第一弾として試験運用を開始したサービスが「Accelerator(α版)」だ。