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「新規事業提案制度」事務局運営のリアル

なぜリコーの「TRIBUS」は全社を巻き込み続けられるのか──事例とともに紐解くプログラム継続の秘訣

第1回 ゲスト:リコー TRIBUS 森久泰二郎氏(後編)

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 多くの企業が設けるようになってきている新規事業提案制度。毎年多くのアイデアを集めていたり、事業化や会社化まで至っていたりと取り組みが進んでいる新規事業提案制度は、運営においてどんな試行錯誤や工夫がなされているのでしょうか。本連載では、イノベーション鈴木氏をホストとなり、先駆的な試みを実施している新規事業提案制度の事務局運営者との対談を通じて、新規事業提案制度の運営のヒントを探ります。今回のゲストは、株式会社リコーで社内外統合型アクセラレーション(事業成長)プログラム「TRIBUS」の運営リーダーとして活動する森久泰二郎氏。後編ではプログラムを継続するための工夫や実際の事例について伺っています。

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TRIBUS流、社内外関係者の巻き込み方

イノベーション鈴木氏(以下、鈴木):前編では、森久さんが運営されている日本でも珍しい社内外統合型アクセラレーションプログラム「TRIBUS」の特色、そのコミュニティ運営や社長直下型の新規事業提案制度の強みについて伺いましたが、実現に至るまでは相当細かい調整があったと想像します。

 TRIBUSの体制が整うまでのプロセスをお聞きしたいのですが、初期段階からこの形を構想していたのか、それとも試行錯誤を経てここに至ったのでしょうか。

森久泰二郎氏(以下、森久):かなり試行錯誤しています。立ち上げ時には他社の成功事例のヒアリングを密に行い、TRIBUSの骨格部分は早い段階で固めていました。ただ、実際に統合型アクセラレータープログラムを運用する中で、社内調整やスタートアップとの協業に関して、社内部門のマインドセットを変える必要があることを感じ、細かい部分は様々な調整を行ってきました。

 たとえば、初年度はリコーの注力領域を基に抽象度の高い募集領域を設定しましたが、次年度からはビジネスユニットや部門が自らスタートアップとの連携領域をリバースピッチを行い提案する体制に変えるなど、よりリコー側が具体的、主体的に協業・共創意識を高める方向に調整しました。

 その中で、社内の多くの部門が、スタートアップとの連携に慣れておらず、どうやってスタートアップに自分たちの目指す方向を知ってもらうか、リソースを活用してもらうか、その見せ方に苦労していることを実感しました。

鈴木:スタートアップには、単なる技術紹介、事業紹介にならないようなプレゼンをすることが重要ですね。

森久:その通りです。そこでTRIBUS事務局で各部門にレクチャーを行い、スタートアップとの連携に必要な考え方やアプローチを共有しました。その結果、各部門がスタートアップとの連携窓口を形成し、今ではスタートアップ側からの積極的な提案を受け入れる体制が整っています。これにより、たとえTRIBUSに採択されない場合も、スタートアップとリコーが自然に連携する動きが生まれ、社内全体のマインドセットも大きく変わってきたように思います。

鈴木:素晴らしい媒介をされていると思います。では、TRIBUSにおける事業部門の巻き込みはどのように工夫されたのでしょうか。というのも私自身、既存事業の中でも特に売上が大きい事業組織をスタートアップ協業に巻き込むことに難しさを感じてきたからです。

森久:リコーの場合、「デジタルサービスの会社への変革」を宣言していますが、外部から見るとコピー機やカメラというイメージが強く、それ以外の分野での協業アイデアを集めるのにとても苦労しました。そこで、リコーはデジタルサービス全体に注力するというメッセージをあらためてスタートアップに訴求するのと同時に、ピッチの審査員として、リコーグループの販売機能を担うリコージャパンの社長やCFO、CTOに参加してもらうようにすることで、「トップがコミットメントしたプログラムである」との打ち出しを強くしています。

鈴木:なるほど。既存事業のトップ層に新規ビジネスやスタートアップとの協業案件を草創期から見てもらうことで、トップレベルでの理解と関与を促しているのですね。とても丁寧な巻き込み方だと感じます。

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スピーディな対応と細やかな改善が可能な「トップボトム」

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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