グローバル展開の拠点としての、シンガポールとシリコンバレーの価値
蛯原健氏(リブライトパートナーズ 代表取締役、以下 敬称略):岡田さん、今日はよろしくお願いします。まずは簡単にABEJAについてご紹介いただけますか。
岡田陽介氏(株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO、以下敬称略):はい。よろしくお願いします。我々は、AI、特にディープラーニングのビジネス活用を支援している会社です。AIの技術でビジネスをしている多くの会社は、自社で開発したAIエンジンを売っています。ですが我々は、「ABEJA Platform」という“AIエンジンを作る仕組み”を提供しているのが大きな特徴です。このプラットフォームを中核に、小売、製造、物流、コンタクトセンターなど、各業界向けにAIを活用したサービスを提供しています。
蛯原:僕は2013年からシンガポールに住んでいるのですが、ABEJAさんもシンガポールに法人を作りましたよね。シンガポール法人の代表の方とも、現地でお話させてもらったりしています。
岡田:はい。2017年3月に現地法人を設立しました。シンガポールは国を挙げてAIを推進しているので、日本ではなかなかできないことにも挑戦しやすい。グローバルにおける先駆的なビジネスモデルを作るために、格好のケーススタディの場だと考えています。
蛯原:人材確保という目的もありますか?
岡田:おっしゃるとおりです。特に最近は、NUS(シンガポール国立大学 National University of Singapore)のレベルが日本と比べても圧倒的に高くなっていますから。
蛯原:でも、人数はそれほど多くないですよね?
岡田:そうですね。ただ、採りたいのは上位数パーセントなので、量というよりも、質が重要だと考えています。優秀な方々が集まるのはアメリカやシンガポール、に集中してきている感がありますから。
蛯原:先日、シリコンバレーにも進出されましたね。
岡田:はい。ソフトウェア業界では、誰がなんと言おうとアメリカ西海岸なんですよね。日本やシンガポールでどれだけビジネスが成功しようが、アメリカ西海岸で認められない限りはグローバルで認められないということを、つくづく感じます。当然、あちらには競合がたくさんいて勝負のレベルもどんどん上がるわけですが、そこに立ち向かっていくことがとても重要だ、という強い思いがあって現地法人を作りました。
蛯原:シンガポールとはまた違う狙いがあると?
岡田:はい。シンガポールを始めとする東南アジアの国というのは、ビジネスモデルが極めて秀逸になってきています。我々にとって東南アジア周辺は、ビジネスモデルも含む大規模なテクノロジーの実験場としての価値が大きいと感じています。一方、アメリカはやっぱりテクノロジーの国です。テクノロジーをしっかりと作り込むことによって、グローバルに広めていく礎にしたいという意味を込め、会社名はABEJA Technologies, Inc.としました。