顧客検証フェーズと成長フェーズにおける課題と解決策とは?
本連載では、事業開発に共通してみられる「課題を定義し、解決策のアイディアを創出し、プロトタイプを作り、顧客検証を行い、ニーズがある場合成長のフェーズに移行する」というプロセスを「Define・Ideate・Prototype・Test・Growth」プロセスとして定義しました。前回は前半のDefine~Prototypeに特徴のある事例について紹介しましたが、今回は、後半のTest・Growthに特徴のある組織、中でも「コーポレートスタートアップスタジオ」と呼ばれる組織について紹介します。
プロセスの後半、Test・Growthの段階では、「自社内の開発リソースが確保できない」「外部の開発会社と連携した開発・検証がクイックに進められない」「事業の引受先となる組織やエンティティがない」「予算獲得や人材採用に多大な説明コストがかかる」などが原因となり、事業化が進まない状況がよく見られます。その解決策の1つとして、「コーポレートスタートアップスタジオ」という組織形態が挙げられます。
『STARTUP STUDIO-連続してイノベーションを生む「ハリウッド型」プロ集団』の著者アッティラ・シゲティ氏の定義によると、そもそも「スタートアップスタジオ」とは「同時多発的に複数の企業を立ち上げる組織」を意味しています。つまり、プロダクトや事業を生みだすための重要な機能をスタジオ内に保有することで、次々にイノベーションを生みだすことを目的とした組織です。ここでいう重要な機能には、資金調達やビジネス開発だけでなく、エンジニアやデザイナー、マーケター、ファイナンス、法務、その他オペレーションが含まれます。通常、スタートアップスタジオには、これらの機能を担う各分野の専門家が所属しています。つまり、ハリウッドの映画スタジオが同時並行で作品を作るように、ビジネス開発のプロフェッショナルが集結し、連続的に事業を創出するための組織がスタートアップスタジオです。この組織形態は世界的に増加しており、代表例としてベータワークス、サイエンスなどが挙げられます。
そして、スタートアップスタジオを大企業内部に組成したのが「コーポレートスタートアップスタジオ」と呼ばれる組織です。今回は、その事例としてAXAのKamet Ventures、Samsung のC-labについて紹介し、そこから学べるポイントについて考察していきます。