2019年までを振り返って分かった世界の資金調達“3つの特徴”
最初に、Coral Capitalパートナー兼編集長の西村賢氏が登壇し、世界と日本におけるスタートアップの資金調達のトレンドについて紹介した。
2019年末までの世界的なスタートアップの資金調達の特徴として、西村氏は以下の3点を挙げた。
- VCファンドの大型化
- スタートアップ企業の調達ラウンドの大型化
- 2019年後半からの調整局面
2019年の7月に約12兆円規模として設立が発表されたソフトバンク・ビジョン・ファンドの2号ファンドを象徴として、VCファンドの規模は年々大型化している。2009年には「マイクロファンド」と呼ばれる5000万ドル規模のファンドが約半数を占めていたが、2019年には約30%まで下がっている。その代わり1億ドル以上のファンドが増えてきているのだ。実際、アメリカを代表する老舗ベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)は、ファンド組成額が2007年の3億ドルから2018年には76億ドルと、規模を拡大している。
それと対をなすように、スタートアップ企業の大型資金調達も増加傾向にあるという。2013年には36件だった1ラウンドでの1億ドル以上の調達が、2018年には207件、2019年も200件を超えるペースで資金調達がなされているのだ。2013年といえば、UberがGoogle Venturesから2億5800万ドルを調達して大きな話題となった年。そこから資金調達が巨大化していったのが2019年までのトレンドなのだと話す。
しかし、VCの投資/スタートアップ企業の資金調達の大型化は、2019年後半から調整局面に入ったのだという。その象徴的な2つの例がWeWorkを運営するThe We Companyの上場延期と、Uber Technologiesの株価低迷だと西村氏は話す。一時は470億ドルとみられていたThe We Companyの企業評価額は80億ドル以下まで縮小し、9月に予定していたIPOも延期された。2019年最大のIPOとして5月に上場したUber Technologiesも、1株45ドルで公開されたものの初値が42ドル、一時は30ドルを切るほどまで落ち込み、その後は30ドル前後で推移している。
西村氏は、この調整局面に入った理由として“テック企業”という言葉が期待されすぎていた点を挙げた。“テック企業”とされると無条件に市場から高く評価される傾向にあったものが、ビジネスモデルのスケーラビリティをより厳密にみられるようになったのだという。ただ、あくまでも調整局面であり、投資/調達の大型化は変わらないのではないかと話した。