今回の検証は、2019年9月に設立した「丸の内データコンソーシアム」において、両社でデータ活用を通じた街・社会への新たな価値や事業の創出を目指した取り組みの一環として実施したもの。
検証にあたっては、三菱地所が保有する、ビルごとの入居企業数や在勤者数、廃棄物の収集ルール等のデータに加え、廃棄物収集業務にかかる現地視察も実施。それぞれの廃棄物処理事業者から廃棄物の種類に応じた運搬車両の仕様、ビル/廃棄物種類ごとの回収の頻度・量・ルート・作業時間等のデータを収集・整形し、現状の可視化を行った。
収集したデータや「MAGELLAN BLOCKS」が提供する気温・湿度・降水量などの気象データ、地区イベント情報など、予測に影響する要因となるデータ(予測因子)をもとに、ビル/廃棄物種類ごとのごみ発生量をAIで予測するモデルを構築・評価し、実際に数か月後のごみ発生量の予測・シミュレーションを実施した。予測結果に基づき、車両の積載可能量やビル・処分場の搬出入の形態・位置、収集作業時間等の制約条件を考慮して、廃棄物が発生するすべてのビルを経由して確実にごみを回収するとともに、車両台数が最も少なく、かつ移動距離が最短となるルートの組み合わせを、量子アニーリングを活用してシミュレーション。
「MAGELLAN BLOCKS」の機械学習/深層学習と量子コンピューティング技術を活用することで、約94%の高精度でごみ発生量の予測を実現し、その予測結果に基づき、膨大な組み合わせの中から最適なルートを瞬時に求めることができた。丸の内エリアにおいて廃棄物の収集運搬業務の効率化、移動距離の最小化が実現することで、CO2排出量は約57%削減が期待できるという。
AIによるごみ発生量の予測では、特に可燃や生ごみ、ダンボール等においては日ごとの傾向も微細にとらえた予測を実現するなど、90%を超える高精度な結果を算出し、実運用への容易な移行を可能にした。ビルだけではなく地区のイベント情報や廃棄物の発生要因を細分化してデータ化する等して学習を重ねることで、さらなる精度向上も見込める。
量子アニーリングを活用した最適解として、現状の総走行距離約2,300kmに対して約1,000kmでごみを収集する最適ルートが導き出された。これにより、CO2の排出量は約57%削減、車両台数は約59%削減される試算となり、SDGs・脱炭素化への寄与が期待される。
グルーヴノーツと三菱地所は、「廃棄物収集ルート最適化」の検証から生まれたデータをもとに、具体的な運用に向けたPoV(Proof Of Value:導入前検証)を行っている。さらに、ビルごとに異なる様々な廃棄物処理業者との共創を図ることで、収集業務の効率化による長時間労働の削減や人手不足の解消にも貢献していくとしている。