このレポートは、経営者やマーケター、企業の組織全体がどのような認識をもってブランド構築に資するマーケティング戦略の策定・実行をすべきかをまとめている。日本版公開にあたっては、日本企業への示唆と解説をデロイト デジタル ジャパン Deputy Leadの熊見成浩氏がまとめ、「日本の視点」として加えている。
今回のレポートでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下で不確実性が増し、人と人との新しいつながりが求められている状況に鑑み、企業があらゆるステークホルダーとのつながりを強化し、存在意義を高めるために求められることをトレンドにまとめている。挙げられた7つのキートレンドは、
- パーパス(Purpose)
- アジャイル(Agility)
- HX ~人間としての経験~(Human Experience)
- 信頼(Trust)、参加(Participation)
- 融合(Fusion)
- 人財(Talent)
で、昨年と同様だが、COVID-19の影響を受けて序列や内容に変化が生じているという。
「日本の視点」のパートでは日本において押さえておくべき視点として以下の3点を述べている。
1.経営者の求める効率性とパーパスドリブン企業の関係
グローバル企業の経営者(主に米国)の多くが、効率性を重視して成果を達成したいと考えている一方で、消費者は、効率性とは直接的には相反する取り組みを行っている企業に対して、ブランドに対する認知・認識・購買行動にポジティブな印象を受けていることがGlobal Marketing Trendsの発行に向けて行った調査よりわかった。不確実性が高く、難しい舵取りが迫られる状況だからこそ改めて自分たちが何者なのかを研ぎ澄ませ、何に投資し、何に投資しないかを決めていく必要があるとしている。
2.アジャイル(俊敏性)の重要性の向上
アジャイル(俊敏性)は前回のレポートでは7番目に位置していたトピックだが、今回は2番目に上がっている。COVID-19によって明らかに消費の傾向が変わった業態・商材が多数出現する状況下では、最新の変化する消費者状況を社内外のデータに基づいて明らかにしつつ、最適な手段を迅速に打つことが求められる。そこで日本企業にとっての最大の障壁は、変化に素早く対応しうる組織力の向上だという。環境変化が速いこのような環境下では、日本企業に多い摺合せ型のゆったりとしたスピード感が致命的状況を引き起こしかねず、チャネル戦略であればCMO・CIO・CSOのような主要メンバーでの早期の意思決定の場を持つことや、データドリブン型R&Dと生産体制の連携スキームの確立など、施策の高速化に必要な対策がより重要になってくる。
3.HX(Human Experience:人間としての経験)
HXの対象は顧客の経験(CX)だけではなく、従業員の経験(EX)、ビジネスパートナーの経験(PX)を含めたものを指す。CX的な観点に立てば「自社が提供する商品・サービス」と「それを享受する顧客」の間の、購買行動を中心とした1対1の関係だけが問題だったものが、HX的な観点ではあらゆるステークホルダーへの価値提供を目指すため、その射程は大きく広がる。HXが注目されている背景として、顧客の体験が多岐にわたり複雑化する中、従業員やパートナーが顧客に対して与える影響が極めて大きくなっていることが挙げられる。CX中心の世界では普通だった現状を疑い、デジタルが得意とするところを活かし、より人間的活動に注力していくことが、勝ち筋のひとつとなっていくとしている。