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企業のイノベーション成熟度を測る「5つの診断基準」──なぜ同じ事業開発プロセスでも成果に差が出るのか

第2回

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 前回は「非イノベーション構造を生み出す元凶とは何か?」のテーマで、社内起業制度や風土改革がうまく進まない原因を紐解きました。本稿では「企業のイノベーション成熟度を測る5つの診断基準」を紹介します。このフレームワークを用いた議論により、課題の特定と活動の優先順位を定めることができます。中小企業から大手企業まで、様々な規模のプロジェクトを横断する中で培った「実践知」を提供します。

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診断基準1:新規事業の「定義」が成功を左右するファクターに

新規事業を生む組織の構造

 新規事業の芽をつぶしてしまう根本原因は何か。年々先細る社内提案制度にはどんな問題があるのか。前回はゴルフの「フェアウェイとOB」の関係を例に示しました。自社のイノベーション領域の定義がなく、社内のアイデアを評価できないのです。

 関係者ごとに見えているものが異なり、役員同士でもバラバラの定義で理解していることもあります。「いつも話しているだろう」と社長は言うものの、その解像度は低く、認識の相違が社員ごとに起きている。肝心なのは細かい粒度で浸透していることです。仮に定義がされていても、伝わっていなければ意味がありません。

 反対にどの領域で事業を作るのかが明確であれば評価もしやすく、アイデアや協力を集めやすくなるのです。「本業に少しでも関係していれば」「XX億くらいの商売にできれば」という曖昧な答えになっていてはいけないのです。

 ここで具体的な成功事例を2つご紹介します。1つめはクックパッドの『食と料理にまつわる課題マップ[1]です。料理レシピの投稿・検索サービスで地位を確立した同社ですが、このマップを作成することで、クックパッドがごくわずかな社会課題の解決に留まっていることを認識できたといいます。

 本来は料理スキルの減少を食い止めるだけでなく、外食依存を始めとする食の工業化と食材の画一化、料理文化の衰退にまで関与できるはず。そのストーリーを社員が自らの言葉で語れるようになったことで、イノベーションへの一歩を踏み出しました。

 2つめにダスキンの例を紹介します。同社は50年以上、訪問レンタルの「お掃除事業」が定着していました。これを2018年、暮らしのリズムや職場環境を整える「生活調律業[2]として見直しを実施したのです。お掃除はあくまで1つのファクター。売上施策や自社技術応用の視点ではなく、自分たちがどの領域の課題に対して貢献できるかを定めることが、イノベーション活動の起点になるという好例です。

 間違えてはいけないのが、経営方針やビジョンではなく、新規事業の「領域」を示しているという点です。混合することなく、外部のトレンドや社会課題、自社のコアコンピタンスなどを用いて定義づけすることが重要です。

 次の診断基準は「目標・指標」です。多くの企業で、同様のミスを犯してしまうケースが見受けられます。


[1]クックパッド「食と料理にまつわる課題マップ」(「料理にまつわる社会課題って?〜クックパッド大学という取組み〜」2018年1月11日)

[2]ダスキン『「お掃除業」から「生活調律業」へ 新たな取り組みの場、社内外との共創の場としてダスキンラボを開設』(ニュースリリース 2019年5月21日)

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この記事の著者

大長 伸行(オオナガ ノブユキ)

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