VUILDでは2020年グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)を受賞した「まれびとの家」において、3D木材加工機「ShopBot」と地元の木材を使い、製作を地域完結させることで、これまで避けられなかった長距離輸送や環境負荷、時間、コストを削減する取り組みを試してきた。
Nesting βは、まれびとの家で培った経験を基に生まれた家づくりプラットフォーム。ユーザーが自分たちの理想の暮らしを実現できるよう、デジタルテクノロジーを用い快適で環境負荷の少ない住まいを自分たちで設計し、作り出す体験を提供するとしている。
「Nesting(ネスティング)β」での家づくりのプロセス
1.土地の選択
日本の各地域のコミュニティホストが提供する敷地の中から、風景やコミュニティなども参考に好みの土地を選択する。
2.暮らし方を考える
都会の暮らしでは持つことを諦めていた書斎やスタジオ、店舗や工房など、理想の暮らしを妄想し、暮らしをプランニングする。
3.アプリで間取りを設計する
現在開発中の家の設計アプリで必要な間取りを描くと、瞬時に家の形が立ち上がり、概算の見積もりを取得。予算と要件を確認しながら間取りの調整が可能に。
4.住宅性能を決める
気候風土に合わせて住宅の仕様を決める。予算に応じて、設備の種類・断熱材の厚み・建具の性能を決めることで、エコハウスやオフグリッドハウスの建築も可能。また昨今話題の自律分散型水循環システム「WOTA BOX」(WOTA株式会社)の選択もできる。
5.家を組み立てる
地域の木材を用いて、地域に置いてある3D木材加工機「ShopBot」で家の部品を出力。専門家の指導のもと、プラモデル感覚で家族や仲間と家づくりを楽しみながら組み立てる。
コロナ禍による外出自粛など、これまでの生活様式や考え方が大きく変わり始めた約1年前から、VUILDはBIOTOPEと「創造性の民主化」という共通するビジョンを土台に、未来の住まい方について議論を重ねてきたという。
これからの住まいは、自分や誰かと共に過ごす空間を持つ余白を持ち、自分たちなりの豊かさを生み出すプロセスを楽しむことが豊かな住まい方を作り出す鍵になるとVUILDとBIOTOPEでは考えているという。
皆でオープンキッチンにて料理すること、縁側の下でものづくりをするスペースを自分たちの楽しみ方から構想しデザインすることなどにより、自分の力で豊かさを稼ぎ出し、それを誰かに分け与えることで仲間と過ごす時間を育んでいくという住まい方が、ポスト資本主義を切り開くVUILDとBIOTOPEが目指したいライフスタイルだと述べている。
そのライフスタイルを目指していく一歩目として、Nesting βによる家づくりのプロジェクトとして、北海道弟子屈町にて1棟目となるプロトタイプを9月末に竣工、その後シェアビレッジと協業し秋田県五城目町にてコーポラティブヴィレッジ(5棟同時建設)を建築、個人宅から集落までの実践を行う。また並行して、家の設計アプリを実装し、10月に正式リリースを予定。