スーパーアプリ化が進む、中国・東南アジア・インド
尾原和啓氏(以下、敬称略):新型コロナウイルスによって世界中でゲームチェンジが加速しています。まずは蛯原さんにアジアを中心に世界の状況をお聞きしたいと思います。
蛯原健氏(以下、敬称略):アジア全体でDXが起きています。特に新興国では、コンシューマーサービスが立ち上がり、そこに資金が集まってユニコーン化していくという特徴があります。
今東南アジアで最も企業価値の高い会社は、ECプラットフォームのShopeeやゲームプラットフォームのGarenaを運営するSea Limitedです。現在時価総額約15兆円となり、シンガポールの銀行なども抜いて1位になっています。
インドの時価総額1位は、リライアンスという財閥企業です。この企業は以前から存在していましたが、数年前に4G革命を起こしたことが有名で、モバイルキャリアで約4億人の4Gサブスクライバーユーザーを抱えています。この企業はリテールも全国で展開していますが、キャッシュレスペイメントをFacebookと協業していることも特徴です。
中国は言わずもがな、アリババとテンセントが圧倒的な二強ですよね。これらの国では、この10年ほどでDXやスタートアップを担う企業たちが時価総額としても最大になってしまった。ここが日本とは大きく異なる点ですよね。
尾原: 10兆円クラスの時価総額にもかかわらずスタートアップのスピード感で動き、しかもグローバルでのアライアンスも展開している。このような企業が出てくることで、どのようなゲームチェンジが起きているのでしょうか。
蛯原:最初にゲームチェンジの波がきたのはコンシューマー産業で、コンシューマーの生活アプリ、いわゆる「スーパーアプリ」の誕生が大きな変化ですね。東南アジアでは、GrabやGojekという1兆円超の企業価値になったスタートアップが同じように取り組んでいます。その次はフィンテック、つまり金融のDXです。その次がライドシェアです。東南アジアではみんなタクシーに乗らなくなってしまいましたよね。
すべてのライフシーンがデジタルで完結できるようになりつつあります。人口構成が若いなど様々な理由がありますが、この流れが現在6合目まで到達しているという印象です。そして次に波がきているのは、BtoBを含めた全産業のDXです。
尾原:中国、東南アジア、インドの特徴は、個人間のお金のやりとりや、小さな露店含めた店舗での決済と、東南アジアでのバイクのライドシェアをはじめとした日々の移動をモバイルで完結させていることです。高頻度接点のものを中心にスーパーアプリ化していき、それがバリュージャーニーの中で展開していく。この流れが、お金の支払先という形でスモールBにも入ってくることで、彼らがビジネス展開するためにBtoBも伸びているということですね。