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競争環境の変化を把握し備えるためのセオリー

『イノベーションの最終解』

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競争変数が激変する兆しとは?

業界の変化を予測するためのプロセス▲ 図表1 業界の変化を予測するためのプロセス

 まず、イノベーションによって「これまでの競争変数が変わるのかどうかを見極めること」が重要です。持続的イノベーションでは従来の競争変数を向上させることが勝負を決めますが、破壊的イノベーションでは従来の競争変数での優位性は逆に足かせになってしまうからです。こうしたイノベーションの兆しを見極めるためには、顧客を観察することからはじめます。顧客といっても、製品をまだ買っていない、「無消費者」も含めて捉えることになります。

1:無消費者:製品を消費していない顧客や、製品を不便な環境で消費している顧客

 無消費者は、金銭的に恵まれなかったり、製品を使いこなせなかったり、製品へのアクセスがない。この顧客層がやりたい用事(ジョブ)を解決するような製品やサービスは「新市場型破壊的イノベーション」となり得る。

2:満たされない顧客:製品を消費しているが、ニーズが満たされていない顧客

 満たされない顧客は、製品・サービスの性能がまだ不十分だと感じており、より高性能な製品・サービスのために支出を増やしてもよいと考えている。この顧客層に向けた製品改良が提供できれば、「持続的イノベーション」となり得る。

3:過剰満足の顧客:製品を消費しているが、ニーズが必要以上に満たされている顧客

 過剰満足の顧客は、既に満足しており、性能向上に対して対価を払いたくないと考えている。この顧客層に向けては「ローエンド型破壊的イノベーション」、「置き換えのイノベーション」、最低標準の規格化のいずれかが生じる。

 ここで、聞きなれない「置き換えのイノベーション」に関して補足しておきましょう。

 製品ライフサイクル初期の製品が持続的イノベーションを続けるためには、垂直統合された組織が必要になる反面、過剰満足の顧客が出現する後期にかけては、水平分業が進みます。AT&Tが当初は電話機も販売していたように、電電公社も電話回線と同時に電話を提供していましたが、次第に電話機という製品市場には各家電メーカーが参入し、通信会社が提供していた電話機を置き換えました。これが置き換えのイノベーションです。SIMフリー化によって、携帯電話もこの流れに乗っています(尚、「最低標準の規格化」では、置き換えとローエンドが同時に発生するので、簡略化のために説明は割愛します)。

 この3つの顧客層と合わないタイプのイノベーションは成功しません。テレビの画質に不満足な顧客があまり存在しないような状況下で、シャープが行った高画質LCDへの投資は回収の見込みがなかったのです。

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競争優位性は「強さ」だけにあらず

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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