1stパーティデータによる顧客理解で、より適切な顧客体験を創出
それでは、ポストCookie時代において、どのようにしてマーケティング活動を行っていくのか。田村氏は、「これからは『1stパーティデータ』の把握/活用が重要になる」と語り、顧客との信頼関係を築くための「透明性」と「ベネフィットの提示」が重要になると指摘した。また、一方で様々な企業で3rdパーティCookieに依存しないソリューションが開発されており、そうしたテクノロジーを賢く活用するのも良いという。
顧客のLTVを最大化する顧客体験の設計には、部分的なデータではなく、顧客体験のファネルに沿った各種のデータ統合が欠かせない。これまでは、「認知」や「行動」といったフェーズや部署でサイロ化されていたデータを、顧客データプラットフォーム(CDP)に統合し、顧客一人ひとりの行動や反応から「どのような体験を望んでいるのか」を理解して、各施策への活用と高度化を進めていくことが重要になる。
その中で、重要度が高まっているのが、顧客から提供してもらう「ゼロパーティデータ」だ。自社チャネルで任意で収集した顧客のデータが「1stパーティデータ」であり、「ゼロパーティデータ」は顧客とのエンゲージメントを高め、対価を返していくために顧客自身が能動的に企業に提供するものになる。趣味・嗜好、興味や意向など、より深いレベルの顧客の行動・心理・ライフスタイルなどを把握できるデータであり、それをもとに企業側はより良い顧客体験を提供していく。つまり、「顧客自身が能動的にデータを提供したいと考えるような環境」を作ることが重要になる。
顧客ロイヤルティについても、マーケティングの見方は大きく変化しつつある。これまでは広告などで大きく認知を広げ、そこからどのようにピラミッドの上を目指してもらうかを考えてきた。しかし、これからの顧客識別ピラミッドは、1stパーティデータを活用して、売上の比重の高い優良顧客を理解し、満足度を高め、そこから広げていく。いわば視点の逆転が必要になる。
そうした事例として、田村氏はインキュデータが手掛けた大手保険会社での取り組みを紹介した。この企業では、顧客データがサイロ化しており、企業目線での商品提供・マーケティングになっていた。しかし、若年世代の顧客獲得や新商品開発において顧客目線に切り替えることを目標に、顧客データ統合基盤を構築した。それによって、顧客を点ではなく線でしっかり理解でき、One to Oneコミュニケーションの実現や新商品による顧客獲得に寄与しているという。
認知から契約までで、どのステップにユーザがいるのかを把握し、それに応じてレコメンドを送ったり、スモール保険をおすすめしたり、ライフスタイルデータも加味した内容や出し方で、アプローチを行ったりしている。顧客の行動もモニタリングすることで、適切なタイミングで適切な保険商品を提案できるようになった。顧客を線で追うことで、一人ひとりの顧客に最適化された顧客コミュニケーションを実現している。
まずインバウンド型(PULL型)では、従来、顧客から相談予約が入り、実際の相談の場でヒアリングを行うことが多かった。しかし、応対する人のヒアリングスキルによって得られる情報に差が生じていたという。そこで、予約情報をもとに成約見込み度を可視化しておき、応対時に活用することとした。
そしてもう1つ、アウトバウンド型(PUSH型)では、相談予約が入らない顧客についてもWebでの行動を分析してスコアリスト化し、それに応じてセールスの電話をかけたり、商談時に活用したりすることが可能になった。
田村氏は「繰り返しになるが、1stパーティデータを活用したマーケティング活用がこれまで以上に重要になる。顧客目線に立ったデータ収集や仕組み構築が求められる」と強調し、それを実現するためにBrazeのプラットフォームが有効であることを紹介した。