「タンジブル・ビッツ」における独創・共創・競争
佐宗:石井先生は「タンジブル・ビッツ(手で触れる・実体がある情報量の最小単位)」と「ラディカル・アトムズ(過激な原子)」をビジョンとして掲げながら、リアルとデジタルの融合を目指して研究をされていますよね。先ほど独創・共創・競争という3段階のフェーズが挙げられましたが、このビジョンが作られていく過程で、各フェーズはどのようなものだったのでしょうか。
石井:1995年、MITに来て「タンジブル・ビッツ」の研究を始めた当時、世間のデジタル、ビットへの礼賛が行き過ぎているように感じていました。世界をビットとアトムズの二極対立構造にして単純化した結果、世界がはっきり見えてくるのはすばらしい。けれど、VR、メタバースのようにすべてがピクセルで表現されるようになってしまったら、削ぎ落とされてしまうものがたくさんあるはずです。身体性、香り、赤ちゃんを抱きしめた時の感覚、人と手をつないだ感覚、一緒に食事すること、ドキドキすること……。