ビジョンには「どんな人間であるか」が問われている
佐宗:美学・哲学がより重要になってきているのは、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」と呼ばれる理念をデザインするプロジェクトをやっていると実感するところです。理念を設定しようとすると、自分たちの中で不変となる価値基準を設定する必要があります。それが、その組織に根差す美学や哲学なんですよね。先生は、美学・哲学を備えたビジョンを作るためには、何が必要だとお考えですか?
石井:基本的に「あなたがどういう人間か」ということが問われているのでしょう。お金を儲けるだけ、技術的に何かを作ることに長けているだけでは、人間とはいえません。また、人の痛みを自分の痛みとして理解する感性が備わっていない人も、人間ではありません。さらには、すばらしい研究をする、すばらしい技術を持っているというだけでは、尊敬されないのです。人間として面白くて、もっと話を聞きたいと思われる人でないと、誰も一緒に仕事をしてくれない。つまり人間である上に、どんな人間なのか。そういう意味で、リベラルアーツを勉強することが必須だと思います。