セールスフォースに持ち込んだDell仕込みのマネジメント術
福田康隆氏(以下、敬称略):最初の出会いは、2007年に小関さんがセールスフォース・ドットコム(現セールスフォース・ジャパン)に転職されたときに遡ります。当時、私は同社で拡大しようとしていたインサイドセールスの部隊を率いる人を探していて、エージェント経由で紹介されたのが小関さんでした。どこから見ても欠点が感じられず、逆にうさんくさいと思ったのが小関さんの第一印象です。そこで多方にリファレンスを取りにいったところ、とにかく評判が素晴らしかった。
小関さんのミドルマネジメント観を探るうえで、Dell(現Dell Technologies)でのキャリアは欠かせないと思うのですが、そのあたりからお聞かせいただけますか?
小関貴志氏(以下、敬称略):新卒でNECに入社して5年半ほど働き、2000年にDellに転職しました。最初はヘッドセットを着けて電話をとり、パソコンを売ったり、サーバーの見積もりを取ったりしていましたね。Dellは四半期で一般的な企業の1年ぐらいのスピード感と濃度がある会社で、3ヵ月経つと「チームリーダーにならないか?」という声がかかりました。
背景には、当時のDellにIT出身者が少なかったこと、Dellのなかでもエンタープライズ製品担当で複数の担当者をサポートする役割だったことがあると思います。その後は、そのときどきで声がかかるのに任せて、インサイドセールス部門や個人営業部、オンラインビジネスなどのマネジメントを担当しました。
福田:Dellでは100人以上の部下を持たれていたこともあるそうですね。一方、出会った頃の私はセールスフォース・ドットコムでマネージャーになりたて。10人余りのメンバーを組織し始めたところでした。
今でこそDellは「総合的なIT」としてのイメージが定着していますが、私たちが大学を卒業したての2000年頃は先端的な存在でした。圧倒的な成長の途にあった時代のDellで働いていた方には、特有の“戦闘力”があるように思います。
小関:同じことをセールスフォース・ドットコムや、今のジャパン・クラウドにも感じます。社員数が100人に及ばないような黎明期のタイミングで、そうした企業に目をつける人というのは、ある種のアンテナが高いかもしれません。
福田:Dell出身者には、実行力や数字に対する強さなど、マネージャーとして大事な要素が揃っていた印象があります。そういったDellのいいところを、初期のセールスフォース・ドットコムでは取り入れたし、小関さんもDellで得た気づきを、セールスフォース・ドットコムのチームに伝えてくださったと感じます。
私の印象に強く残っているのは、小関さんの「上司はブレちゃだめです」という言葉。色々な社員の意見がある中で、ミドルマネージャーとしての自分自身の方針が揺れてしまいそうなときの支えになりました。
小関:Dell時代は多くのメンバーを抱えていたので、一人ひとりに対して柔軟に対応することができず、そうせざるを得なかった面もあります。ほめるられた話ばかりではありません。
福田:初期のセールスフォース・ドットコムで小関さんのチームにいた「小関チルドレン」が各所で今、リーダーとして活躍しています。彼らにとって小関さんは“上司”というよりは、各人の成長や精神的なサポートする“先生”として位置付けられていたように思うのです。
小関さんは、日本法人の代表に就任されたCoupaの社員の方々が読むことも念頭に書かれた記事をnoteで毎日投稿されています。内容は、小関さんが日々考えられていることが中心で、単に業務に直結することではなく、そこに到るまでの「ものの見方、捉え方」に焦点があてられているように感じられます。