アドビは、デジタル社会における企業の信頼性に関するグローバル調査「Adobe Trust Report 2022」を発表した。本調査は、企業に対する信頼性の実態や信頼獲得の要件を明らかにすることを目的に、日本を含む世界15か国の12,000人以上の消費者と、従業員50名以上の企業のシニアビジネスリーダー2,000人を対象に実施したもの。
本調査では、地域や国によって多少の違いはあるものの世界の消費者の間で、信頼を獲得し維持するために必要な条件が一致していることがわかった。デジタルと対面における顧客接点の重要性が同等になったことが判明したほか、消費者はパーソナライゼーションとコンテンツを重視しており、企業に対して、コンテンツの信頼性、消費者への共感、データに対する選択肢を求めていることが明らかとなったという。
消費者がデジタルと対面の接点を同等に重視する一方、経営層の半数は顧客との関係構築に課題を感じている
今回の調査では、日本の消費者がデジタルにおける顧客接点を対面と同様に重要と捉えていることが判明。世代別の回答を見てみると、ミレニアル世代やジェネレーションXでは、対面よりデジタル体験を重要視する傾向が明らかとなっており、約2年にわたるパンデミックを通じて、顧客体験が大きくデジタル化した様子がうかがえる結果に。
消費者の顧客体験がデジタルに傾倒する一方で、約半数の経営層(49%)は、COVID-19のパンデミック以降、「顧客との信頼関係構築・維持が難しくなった」と感じており、もっとも多く直面した課題として「顧客からのデータ共有」が挙げられた(34%)。消費者の需要に応えるため、ウェブサイトの改善やアプリの強化といったデジタルの接点に注力する企業が増える中、顧客体験の最適化に必要となる顧客データの取得が大きな障壁となっていることが明らかに。
また、日本の経営層の9割以上が自社の顧客体験や個人情報の管理については顧客の信頼を得ていると回答。日本の消費者の64%は特定のブランドの顧客になってから10年以上が経過しており、他国と比べて最も高いブランドロイヤルティの高さが、日本の経営層の自社評価にも影響していると考えられるとした。
不適切なパーソナライゼーションや個人情報の管理で信頼が損なわれると消費者の7割以上が「購買を中止」
今回の調査では、企業の信頼がその収益に直結することも明らかとなった。7割以上(72%)の消費者が「不適切な」パーソナライゼーション体験は企業への信頼を低下させると回答。個人情報の管理で顧客の信頼が損なわれると影響はさらに大きくなり、約8割(81%)の消費者が購買を取りやめることが判明したという。
日本の消費者は個人情報の活用に特に高い懸念を示しており、75%が「自身のデータを企業がどう利用するのか」を懸念。また83%が「自身のデータが企業に盗まれる」ことを危惧しており、これはグローバルのどの地域よりも高い数値となっている。個人情報の管理に自信を持っている経営層が多い一方で、顧客は企業へのデータ提供に躊躇している様子が明らかとなった結果に。
信頼が購買行動に与える影響をさらに見てみると、企業が一度信頼を失った場合、4割以上が「二度と利用しない」と回答しており、信頼関係の構築が企業の利益に直結することが判明。
顧客の信頼構築に求められるのは、コンテンツの信頼性、消費者への共感、データに対する選択肢
日本の消費者の71%が「優れたクリエイティブコンテンツは企業が顧客体験の向上に取り組んでいることが感じられる」ことから「企業の信頼を高める」と回答。これはグローバルで2番目に高い数値となっており、日本の消費者が特に企業から提供されるコンテンツに注目していることが明らかとなりました。一方で、ウェブサイトの写真が加工されていないか、事実に基づいた情報が掲載されているかといった懸念から、信頼できるコンテンツを求めていることも判明した。
さらに消費者が求めていることとして、企業が消費者の視点に立ち、消費者の抱える不満や求めている要望に共感すること(66%)や、個人データの取り扱いに関する選択肢を得ること(74%)が挙げられた。
今回の「Adobe Trust Report 2022」では、消費者側でデータ共有に対する選択肢を維持しつつ、消費者の気持ちに寄り添った、きめ細やかなデジタル体験が企業の信頼、さらには業績の向上につながることが明らかに。パンデミックを経て、デジタルの顧客接点が重要性を増すなか、適切な顧客に対して適切なチャネルで適切な体験を提供する、パーソナライゼーションの見直しが求められている結果となった。