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なぜ英国政府GDSはDXに成功したのか──巨大な官僚制組織での変革の進め方、組織文化やプロセス

登壇者:Public Digital 共同創業者 アンドリュー・グリーンウェイ氏

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 世界でも先進的な政府組織のDX(デジタル変革)事例として知られている、英国政府Government Digital Service(GDS)。その変革を牽引した4人は2016年にその職を離れて世界の公共組織や大企業のDXを支援するPublic Digitalを創業し、ロンドンを拠点に世界各地でプロジェクトを行っている。  2022年8月、GDSでの経験をまとめた『PUBLIC DIGITAL(パブリック・デジタル)――巨大な官僚制組織をシンプルで機敏なデジタル組織に変えるには』日本語版出版を機に、Public Digital共同創業者の一人であるアンドリュー・グリーンウェイ氏が来日し、講演を行った。英国政府という歴史ある大きな組織のDXは、大企業のDXに通ずるものがある。グリーンウェイ氏らは、大きな組織のDXに際して何を行ったのか。DXによってもたらされるマインドセットは何か。具体的事例とともに語った講演内容を紹介する。

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英国政府Government Digital Service(GDS)での成果

 GDSが設置されたのは2011年である。当時は政府関連の報道で「テクノロジー」とつくものには、大惨事・大失敗という形容詞がセットになるのが当たり前の状況だった。

 「人々は政府がテクノロジーを使ってうまく行政サービスを行えるとは思っていませんでした。信頼がまったくない状態だったのです」と、グリーンウェイ氏は語る。

 それがわずか数年後の2016年には、英国政府は国連経済社会局(UNDESA)が公表する世界電子政府ランキング[1]で1位を獲得し、さまざまな好意的な報道が発表されるようになる。実際にGDSが成し遂げたこととしては、たとえば以下のようなものがある。

  • 40億ポンド(約6000億円)以上のテクノロジー関連予算の削減
  • 1,882の非常にわかりにくい政府関連WEBサイトをGOV.UKという1つのサイトに統合
  • 非効率なITプロバイダー依存を断ち切るデジタルマーケットプレースを作ることで、地方の供給者を増加させるようなエコシステムを促進
  • オンライン決済サービスGOV.UK Payやメールや書面での通知サービスGOV.UK Notifyによって、プラットフォーム型政府への進化を促進

 この英国政府のDXの取り組みはさまざまな国に広がり、オーストラリア政府はこのGDSの方法を真似てDXを図っている。では、政府のように大規模な組織のDXは何を意識すればいいのだろうか。

 このGDSの取り組みで重要だったのは、次の2つだとグリーンウェイ氏は話す。

  1. DXによって、提供するサービス自体がより個人に対応した、よりシンプルで早いものに変化すること
  2. デジタルテクノロジーを使って仕事が行えるように、組織や仕事の仕方を変化すること

 そして、特に重要なのは「2」である。何を提供するかよりも、どのように提供するのかが重要だった。

「多くの大規模組織が犯す間違いは、DXとは単に既存の仕事に新しいテクノロジーを適応すれば良いと考えることです。しかしテクノロジーの観点だけでDXを考えるのは十分でないだけでなく、かなり危険です。それだと複雑さが増し、多くの場合はコストが嵩みます。ツールや技術の前に、組織を考えなければいけません」

 現に、米国のオバマ元大統領の目玉政策だった医療保険制度改革のための専用サイト「HealthCare.gov」は、リリース当日にアクセス過多でパンクをしただけでなく、さまざまな技術的な問題が起こって1ヶ月以上もシステム障害が続き、修正に21億ドルを費やしている。それは、HealthCare.govが政策上、運用上、政治上の挑戦だったにも関わらず、単に技術的な挑戦としてサイトを作ったことに理由がある。DXを行うためには、組織の文化、プロセス、ビジネスモデルなど、さまざまなことを変えながら進める必要があるのだ。


[1]UN E-Government Survey 2016」(UN E-Government Knowledgebase)

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フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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