グロース・キャピタルは、「市場環境の見通しと岸田政権の政策に関するスタートアップ役員意識調査」を実施し、その結果を発表した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 集計期間:2022年6月14日~7月26日
- 調査対象:スタートアップ役員464名(上場企業役員:152名/未上場企業役員:312名)
- 調査方法:Web実名アンケート
1. 1年後の株式市場(未上場の場合は資金調達環境)の見通し
未上場企業役員では上場企業役員と比較して今後の見通しをネガティブに捉える結果に
「1年後の株式市場(未上場の場合は資金調達環境)の見通しを今と比べてどう見通していますか」という問いに対して、未上場スタートアップ役員は36.5%が「悪化する」「やや悪化する」と回答。上場スタートアップ役員の同回答32.3%と比較して、ややネガティブに捉えている傾向にあることが明らかになったとしている。
2. 1の見通しを踏まえた会社全体のステータス
37.8%の未上場企業「成長戦略の修正・再検討中」、上場企業の21.7%に比べ、16ポイント高い結果に
「株式市場(未上場の場合は資金調達環境)の今後の見通しを踏まえて会社全体としてどのようなステータスですか」という問いに対し、37.8%の未上場企業(未上場スタートアップ役員)は「成長戦略の修正・再検討中」と回答。一方で、上場企業(上場スタートアップ役員)は21.7%が「成長戦略の修正・再検討中」、57.2%が「成長戦略は変えず、実行している」と回答した。背景には、上場企業は財務基盤が比較的安定しており、短期的な市場環境の影響を受けづらいことに起因していると考えられるという。
3. 1の見通しは自社にとって追い風か、向かい風か
未上場企業では上場企業と比較して「向かい風」と捉えている結果に
「株式市場(未上場の場合は資金調達環境)の今後の見通しは貴社にとって追い風(ポジティブ)ですか?向かい風(ネガティブ)ですか」という問いに対し、未上場企業(未上場スタートアップ役員)は「ネガティブ」「ややネガティブ」と37.2%が回答。上場企業(上場スタートアップ役員)の同回答25.0%と比較して「向かい風(ネガティブ)」と捉えている割合が12.2ポイント高いことが明らかになったという。この結果は、未上場企業は資金調達のニーズが強く、市場環境の影響を強く受けやすいことに起因すると考えられると同社は述べている。
また、上場企業にとっては株式市場が下がると資金調達が行いづらいというマイナス面はあるものの、M&A時の買収価格も下がるというプラスの側面もあり、それらがオフセットされるため、「どちらでもない」が46.1%と多いことが推察されるとしている。
4. 自社のM&A方針について
92.7%の上場企業役員が「買い手としてM&Aを検討している」と回答、うち65.1%が積極的にM&Aを検討
「貴社のM&A方針に当てはまるものをお選びください」という問いに対し、上場企業(上場スタートアップ役員)のうち、M&Aを買い手として検討している(積極的・受け身)割合は92.7%(うち積極的に検討が65.1%)に上り、モチベーションが高いことが分かった。株価が下がることは買い手にとってプラスのため、比較的、資金余力のある上場企業にとってはM&Aを積極的に検討しやすい環境になっていると考えられるという。
5. 自社の資金調達方針について(エクイティ、デット双方)
未上場企業の49.4%が「資金調達を積極的に検討中」、上場企業の20.4%に比べ、29ポイント高い結果に
「貴社の資金調達方針(エクイティ、デッド双方)に当てはまるものをお選びください」という問いに対し、未上場企業(未上場スタートアップ役員)の約半数におよぶ企業が「積極的に検討中」という結果が得られた。
6. 岸田政権が掲げる「新しい資本主義」をはじめとした政策は株式市場(未上場の場合は資金調達環境)に対して追い風か
「追い風になる」は20.7%にとどまる、特に上場企業役員では、約9割が追い風になると考えていない結果に
「岸田政権が掲げる「新しい資本主義」を始めとした政策は、株式市場(未上場の場合は資金調達環境)に対して追い風となると思いますか」という問いに対し、「とてもそう思う」「そう思う」と回答したのは20.7%となった。「思わない」「全く思わない」と回答した割合は36.7%で約半分程度であった。上場企業(上場スタートアップ役員)に絞った場合、「岸田政権の政策が株式市場に対して追い風となる」は11.2%(約1割)にとどまり、顕著に評価が低いことが明らかになったという。