“次の100年”を作る社長直轄部門「FDL」が直面した課題
根岸慶氏(以下、根岸):まずは、フューチャー・デザイン・ラボ(以下、FDL)という組織がどのような背景で誕生し、今どのような役割を担っているのかお伺いできればと思います。
田中浩之氏(以下、田中):FDLは2019年に、当時の髙橋社長直轄の部門として設立されました。東急は2022年に100周年を迎えましたが、そこからさらに先の100年、持続的に成長し社会貢献していくためには、既存の延長線上ではない新しい仕事の仕方が必要だという危機感がありました。
不動産領域で約15年のキャリアを積み、マンション開発やオフィステナントリーシングに従事。広報部門での報道対応を経て2024年より現職。MVV開発および定着化プロジェクト事務局マネージャー。特に定着化においてはプロジェクトリーダーを務める。
現在は「3つの柱」で活動しています。1つ目は、シェアオフィス事業NewWorkなどを生んだ「従業員起点の新規事業創出」。2つ目は、スタートアップと共創する「オープンイノベーション」。そして3つ目が、従来の鉄道や不動産といった枠を超えた「新領域探索」です。たとえば微生物の力で汚水を浄化する水循環プロジェクトなど、不確実性の高いテーマに挑んでいます。
根岸:設立から約6年が経過した今、なぜこのタイミングでFDLのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を改定する必要があったのでしょうか。
田中:活動領域が広がり、中途採用も含めて多様なプロフェッショナルが集まる中で、改めて「自分たちの拠り所」を定義し直す必要が出てきたからです。「次の100年を作る」というスローガンは素晴らしいですが、現場のメンバーが日々の業務の中で、もっと自分事として捉えられる“手触り感”のある言葉が必要だと感じ始めていました。
「正則作業」という組織文化とスタートアップ的な価値観を融合する
根岸:坂井さんは2年前、中途で東急に入社されたと伺いました。外部の立場から見たFDLのカルチャーはどう映っていましたか。
坂井裕哉氏(以下、坂井):東急の強みの一つは、鉄道事業などから脈々と引き継がれたルールや仕組みを遵守して確実に遂行する力です。しかし、一日単位で状況が変わる新規事業においては、それが時に個人の勢いをそいでしまうこともあります。
私自身はスタートアップ的な働き方も、大企業での働き方も両方とも経験しています。東急の既存の丁寧な仕事の進め方とスタートアップのスピード感を持つ働き方の双方をかけ合わせたい。それが、私にとっての今回のプロジェクトの原点です。
不動産デベロッパー、デザインファーム、新規事業開発支援企業を経て東急へ入社。デジタルとリアルの融合を目指し、地域ファンづくりプラットフォーム「ツクリテ」の開発などを推進。MVV開発プロジェクト発足時からの事務局メンバー。
田中:新卒入社の人間は、鉄道事業に代表されるこれまで脈々と築いてきた既存事業をきっちり進めていくこと、いわゆる「正則作業」が染み付いています。それが中途採用の多様な視点と混ざり合う中で、新しい文化が生まれようとしている過渡期だと認識しています。
NTT、オフショア開発企業を経て、デザイン&テクノロジーカンパニーである豪Tigerspike社の日本法人代表に就任、企業のデジタル変革を推進。2025年にJAM株式会社を設立し、感情・感性を起点とした組織開発とリーダーシップ変革を支援している。
