NEC、BIRD INITIATIVE、自律調整SCMコンソ―シアムは、電子部品購買業務において、購買側のAIが販売側の人と納期や数量の調整を行う自動交渉AIの実証実験を共同で実施。数日から数週間かかる調整が分単位に短縮され、効率化が見込まれることを確認したと発表した。
自動交渉AIとは、交渉の場面において相手との調整や双方の利益を最大化するような最適解を自動で導く技術。状況によって異なる条件を考慮し、適時・適量の確保に向けて瞬時に最適解を導き出すことで効率化を図るという。
実証実験の概要は以下のとおり。
実証期間
2022年6月~7月
実証内容
NEC関係会社が実際に取引先企業から購入している部品に関して、購買側(NEC関係会社側)が生産計画の変更を受けて発注数量や納期の変更が必要になったシーンを想定。部品の在庫状況と手配状況の実データを用いて、購買側に導入された自動交渉AIが、チャットボットを介して販売側(取引先企業)の担当者と納入条件の変更調整を行えるか検証した。
具体的には、在庫に余裕がない場合の購入量を増やす手配や、急な生産計画変更に伴う部品の手配数量の増減といったいくつかの需要変動のパターンについて、調整結果の妥当性や調整に要した時間・工数を評価したという。
- 購買側で生産計画の変更に伴う部品の需要変動が発生し、自動交渉AIが当該部品の数量、納期の調整を行うために変更要求を販売側(取引先企業)に送信
- 販売側は1の要求を受領し、チャットボット画面にて、担当者が対応可能な数量、納期を回答
- 購買側で2の回答を受領し、自動交渉AIが追加あるいは削減数量と希望納期をチャットボット画面に回答
- 上記1、2の調整・交渉を、合意に至るまで自動交渉AI(購買側)と人(販売側)で実施
NECの自動交渉AIを活用し、生産計画の変更をうけて、必要な部品の在庫状況と発注状況、納入リードタイムから、自社の効用(利益)を最大化(必要な部品の適時・適量確保)するために、追加・キャンセルすべき発注数量と必要時期の算出を行い、販売側担当者と合意に至るまで数量、納期の変更調整・交渉を行ったとしている。
実証結果・期待効果
販売側の在庫で購買側と調整可能な解が存在する場合には、自動交渉AIと販売側担当者の間で合意することができ、従来、販売側との調整・交渉にかかっていた時間を以下のように短縮できたと述べている。
自動交渉AIにより、在庫確認、発注量算出、販売側担当者とのやりとりが自動化され、取引先との調整がスピードアップすることで、購買担当者は部品在庫の適正化や予期せぬ需要変動への対応などに取り組める余力が増え、変動対応力の向上につながることが期待されるという。
なお今回は、購買側が自動交渉AIで販売側が人という形態で実証を実施。今後、購買側が人で販売側が自動交渉AI、または購買側・販売側の双方に自動交渉AIを導入する形態での検証も進めていくとしている。
今後の展開
同実証結果を踏まえ、2社は自律調整SCMコンソ―シアムの活動を通じて、自動交渉AIの適用業務の選定、社会実装を推進し、2023年度の実用化を目指すという。
NECは自動交渉AIの精度向上や他のユースケース向けアルゴリズム開発、BIRD INITIATIVEは自動交渉AIを用いたサプライチェーン上の調整を自動化するプラットフォーム事業を推進すると述べている。